フィンテックとはファイナンス(Finance)とテクノロジー(Technology)を合わせた造語で、文字通り「金融のテクノロジー」を意味している。この言葉が最初に使われたのは1972年のことで、当初はATMや銀行のウェブサイトも含まれていたが、最近は、新しい技術を使って革新的なツールやサービスを生み出すことが示唆されている。ヴェンモはまさしく、そうしたサービスのひとつというわけだ。

 いま世界各国で、このフィンテックに対する注目が高まっている。しかしそれが「金融のテクノロジー」という意味だと聞くと、興味を無くしてしまう人が多いのではないだろうか。だがそれは間違いだ。フィンテックは金融業界を超えて、私たち一人ひとりにまで影響のあるテーマなのだ。

 たとえば米国では近年、大学の学費を払うために学生ローンを借りた人々が、社会人になってから返済に苦しむという現象が多発して社会問題になっている。こうした人々に対し、独自の仕組みで安い金利のローンを提供し、借り換えを促す「ソファイ(SoFi)」というフィンテック系サービスが登場し、人気を集めている。

 学生ローンの返済で問題を抱えると、他のローンを借りることが難しくなる。つまり車を買ったり、家を買ったり、あるいは結婚したりといった人生における大きなイベントに影響が出てくるのだ。したがってソファイのようなサービスがローン返済に苦しむ人々を救えるかどうかは、単に新たな金融サービスが流行するかという問題を超えて、人ひとりの人生や社会全体に深く関係してくる問題だと言えるだろう。

 だからこそ、人とお金の関係を変えていくフィンテックは、金融業界以外の人々にも関係する話なのである。実際に業界関係者からは、「フィンテック」という言葉が実体よりも狭いイメージを与えるとして、もっと適切な表現を使おうという動きも生まれている。

 ただどのような名前で呼ばれようと、フィンテックが社会全体を変える可能性のあるテクノロジーであることには変わりない。それはまるで、空気の成分が変わるに等しい話だ。はるか昔、地球の大気が長い年月をかけてその成分を変えた時、地上に生物が進出することが可能になった。お金という社会の「空気」が、フィンテックによってその姿を変えたとき、そこにはまったく新しい生活や人々が登場することだろう。そうした革命的な変化が、もしかしたら数年のうちに訪れるかもしれない。

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