ソーシャルメディア感覚で個人間の送金ができるアプリ「ヴェンモ」
ソーシャルメディア感覚で個人間の送金ができるアプリ「ヴェンモ」
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「Finance(金融)」と「Technology(技術)」を組み合わせた造語「フィンテック」。金融サービスはもちろん、ビジネス全体、社会そのものが変わっていく可能性があると、経営コンサルタントの小林啓倫(あきひと)さんは指摘する。著書『FinTechが変える!』(朝日新聞出版)では、フィンテック先進国である欧米の最新情勢を紹介しつつ、その可能性を探っている。フィンテックの可能性はどこにあるのか?

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 米スポーツ界最大のイベント「スーパーボウル」。アメリカンフットボールのプロリーグ、NFLのチャンピオンを決める試合で、毎年2月に開催されている。米国で最も人気の高いスポーツだけに、米国民の盛り上がりは熱狂的だ。2016年に開催された第50回大会では、日本の人口に匹敵する、約1億1190万人もの人々がテレビ中継を観戦したという。

 そのスーパーボウル第50回大会開催直後、あるスマートフォンアプリにアクセスが殺到し、いわゆる“落ちた”状態になっていたことをご存じだろうか?

 アプリの名は「ヴェンモ(Venmo)」。画面は一見するとソーシャルメディアのようで、実際に友人たちとコミュニケーションを行うことができる。 しかしやり取りできるのはメッセージではない。指定した相手に、少額のお金を送金することができるのだ。たとえば飲み会などで割り勘にした際、立て替えてもらったお金をその場で清算したり、後日送金したりといった使い方ができる。

 スーパーボウル終了後、このヴェンモへのアクセスが急増し、一時的につながりにくい状態が発生したのだ。その理由は、実はあまり褒められた話ではないのだが、「賭けの清算に使われたから」だと指摘されている。スーパーボウルの勝敗で賭けをした若者たちが、試合結果を知り友人にお金を払うため、スマホを取り出してヴェンモを立ち上げたというわけである。

 いまや賭けの清算すらスマホで済ませる時代。最近、ヴェンモのような「人とお金の関係を変えるテクノロジー」が、雨後の竹の子のように次々と現れている。そしてそうした技術やサービスのことを、「フィンテック(FinTech)」と呼ぶのだ。

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