石原慎太郎都知事の「購入発言」に端を発した、現在の尖閣諸島問題。ジャーナリストの田原総一朗氏は野田内閣の「尖閣諸島を国有化する」という方針について、こう持論を展開する。
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野田佳彦内閣が、尖閣諸島を国有化するという方針を打ち出した。これは、戦後初めて日本外交が足を前に踏み出した、つまり独白の積極姿勢を示したのだと私は捉えている。
尖閣諸島の領有権問題については、78年の日中平和友好条約をめぐり、中国の鄧小平副首相(当時)が、「我々の世代に解決の知恵がない問題は、次世代に任せよう」と提案した。問題を実質的に「棚上げ」して、日中両国の友好を優先させようというわけだ。以後、基本的には「棚上げ」政策をとってきた。
ところが今年4月、石原慎太郎東京都知事が「尖閣諸島を都が買う」と言いだし、そのための寄付が約13億円も集まった。そこで慌てて、国が購入すると言いだしたわけだ。私は、これまでの外交がだらしなさすぎたと捉えているので、この積極外交は肯定する。
だが、中国や台湾は、「日本の外交戦略が変わった。不当な変貌だ」として、認めない。当然ながら、中国、台湾はあらゆる手段で「断固認めない」という姿勢を示すはずだ。
軍隊が尖閣諸島を攻撃するという事態まではいかないだろうが、中国に進出している日本企業との取引を打ち切ったり、難癖をつけて日本企業の従業員を逮捕したりすることは起きるかもしれない。
そんな事態となったときに、野田政権はどのように対応するつもりなのか。日本政府はこれまで、中国や韓国、ロシアなどをひたすら刺激しないようにして、外交上の摩擦が起きることを避けてきたのだが、その姿勢を変えて筋を通すことを選んだ。野田首相にそのための覚悟はできているのだろうか。
※週刊朝日 2012年7月27日号