「山の中に入ってみると、家屋とは違ってシロアリの数がものすごく多いので、少ししかいない場合も反応して『ここにいる』と私に教えるんです。駆除に値するような数がいる反応なのか、その見極めが大変でしたね」(丸山さん)。
探知犬は、調査を開始してニオイを感じた時点で首を上下させて存在を教える。ハンドラーはその様子で強いニオイを感じているのか、弱いニオイなのかを見極め、弱い場合には「強いニオイの場所を探せ」と、もう1度探させる。それをくり返して強いニオイの場所を突き止める。ハンドラーと探知犬の息が合わなければできない仕事だ。
母島で、仕事が終わり宿に戻っているノアを訪ねた。丸山さんがリードをつけて外に出すと、見知らぬ私に盛んにしっぽを振って歓迎してくれた。人家に入ることもあるため「人が好き」という性格も探知犬には欠かせない要素なのだ。
驚いたのは、「オン」と「オフ」の区別ができることだ。仕事をするときに着る制服を着用後、丸山さんが横に立つと「キリッ!」とした顔になりこちらが呼びかけても目もくれない。しかし、制服を取ると「お仕事終了!」と、甘えたり、じゃれたり、おなかをみせたりと犬好きならメロメロになるツンデレっぷりである。
現在アサンテではノアのほかにキラ、ノコという2頭の探知犬と、サムソン、ノックというトコジラミ(南京虫)探知犬、ラリーという探知犬候補がいる。普段はドッグスクールで暮らし、定期的にアサンテ本社にやってきてはシロアリやトコジラミのニオイを忘れないように訓練をする。訓練の様子をみせてもらった。おやつやご飯などが入ったいくつもの容器のうち1つだけにシロアリを入れ、どれがシロアリかハンドラーに教えるというものだ。
「stay(待て)」でお座りして指示を待つ。「seek,seek」と丸山さんが声をかけると、6つの容器の周囲を嗅ぎ回り、ニオイをかぎ分けるとお座りして丸山さんを見る。そこで丸山さんが「show me」というと、頭を上下して「確実にここ!」と教えるのだ。正解だと、「ok,good boy!」と褒められ、おやつをもらえる。 この日はキラとノコの2頭が訓練の様子をみせてくれたが、2頭とも正解率は100%。「ここだよ」と教えるしぐさそれぞれ個性があってそこまたかわいらしいのだった。
シロアリ探知犬はイベントなどで訓練のデモンストレーションをすることもある。こうした活動を通して、シロアリ被害の恐ろしさと防除の重要性を広報しているのだ。
小笠原ではイエシロアリを調査したが、本州では輸入家具などに入ったアメリカカンザイシロアリの被害も広がっている。今までに探知犬は宮城、静岡、愛知、長野、埼玉、群馬、栃木、千葉、茨城、東京(都内および小笠原と大島、八丈島)に出掛け、探知を行った。まだまだノアたちの愛くるしい活躍は続きそうである。(島ライター 有川美紀子)
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