田んぼのU字溝が増水して流されていくカエル。太陽で熱されたU字溝にはりついてひからびたカエル。こんな悲しい光景を見たことはないだろうか。その危機からカエルを救おうと、ある少女が驚くべき発明をした。
2015年3月8日、「日本自然保護大賞」(主催:公財 日本自然保護協会〈※注〉)の授賞式が行われた日比谷コンベンションホールでは、ある少女に拍手が鳴り止まなかった。山口県美祢市の小学6年生、村田結菜さんの「お助け!シュロの糸」という発表についてである。
結菜さんの考案した「シュロの糸」は、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を思い起こさせる発明である。小学校2年の時に参加したカエルの観察会以来、カエルのかわいらしさに魅せられた結菜さんは、小3になったある日、田んぼのU字溝でカエルが流されているのを目撃する。
「あのカエルはどこへいってしまうんだろう? 生きのびられるのだろうか?」そう考えた結菜さんは、その日からカエルとU字溝の関係を調べようと決心した。
まずU字溝の深さを調べ、田んぼにいる数種のカエルがジャンプできる高さと比較し、U字溝に落ちたカエルが「自力で脱出できるか否か」を調べた。
「全部で109匹のカエルをつかまえて、縦ジャンプ、横ジャンプ、ひっつき度を調べました。縦ジャンプは、段ボールで内側に目盛りを書いた筒を作り、カエルを中に入れます。するとカエルが筒から出たくてジャンプするので、その高さを読み取りました。横ジャンプは、カエルをぬらして乾いたコンクリートに置いて、ジャンプした後の濡れた後を計りました。ひっつき度というのは、カエルが手足をU字溝にひっつけてよじ登れるかどうかを調べたかったので、これは小さいレンガを用意して、カエルを載せ、徐々に傾けていき、自作した大きな分度器でカエルが落ちる角度を計りました」(結菜さん)。