1950年代から東京急行電鉄で運行され、引退後は全国の私鉄に譲渡された。しかし、老朽化により廃車が進み、現在は全国でただ一つ、本電気鉄道が北熊本―上熊本間(3.4キロ)で運行する車両のみになってしまった。最近まで2両が走っていたが、15年3月にうち1両が引退。残る1両も、来春をめどに廃止される予定だという。

 一時はアニメ「ケロロ軍曹」のラッピングをして運行されていたが、現在は、本来のむっくりとした姿が見られるそうだ。週末のみの運行だが、沿線でカメラを構え、名残を惜しむファンは尽きないという。北熊本駅の担当者は「入社した時からある車両なので、なくなるのがさみしい、という気持ちはある。引退まで、毎日頑張って走ってほしい」と話していた。

 そして最後は、JR北海道の夜行列車「はまなす」を紹介したい。唯一、定期運行されている急行列車で、本州と北海道を結ぶ在来線列車でもある。青函トンネルを含む札幌―青森間の約480キロを走っている。

 津軽海峡線(青函トンネル)開通により廃止された青函連絡船の深夜便の代替として、1988年に運転が開始された「はまなす」は、「日本で最後の夜汽車の風情を楽しめる列車」として鉄道ファンらに人気だという。かつて全国の鉄路を賑わしたブルートレインの面影を色濃く残す列車だということも、ファンにとっては大きなポイントのようだ。

 しかし、この列車も16年3月の北海道新幹線開業の影響で、廃止されるのでないかという見方が広がっている。希少価値が高まる中、4月下旬にはヘッドマークがなくなる騒ぎもあった。

 たかが列車、と思う人もいるかもしれないが、これまで多くの人を乗せて走った分だけ、車両には思い出が詰まっている。滅び行く雄姿を目に焼き付けながら、その車両の記憶に思いをはせるのも味わい深いのかもしれない。

(ライター・南文枝)