父親のパソコンからとんでもないものが出てきた!(※イメージ写真) @@写禁
父親のパソコンからとんでもないものが出てきた!(※イメージ写真) @@写禁

 今、“活”が花盛りだ。就活に始まり、婚活や妊活、終活と人生の節目にはすべて“活”が付きまとう。最近では「デジタル終活」なる言葉まである。

 人生の終焉を前にしてネット上、PC内の見られては困る写真や資料を処分することだ。この数ある“活”のうち、本人以外の何者かで行えるのはデジタルのそれを含め「終活」だけである。

 だがこの終活、家族が本人に代わって行うことは時として「知らなければよかったこと」を知る悲劇を生む。

 かくいう私も、2年前に「アルツハイマー型認知症」の診断を受けた父親が身近にいる。家族としては、いざ来る日に備えなければならない。そんな思いから、“終活”のため父の身の回りの整理を始めようと思いたった。

 しかし昨年、夫を看取ったという女性から、この“終活”を他人、それも身近な親族が行うことに対する忠告があった。それは「見なければよかったもの」を見てしまうリスクがあるからだという。

 この女性の夫は数年前から認知症を患い、既に嫁いだ1人娘にも看取られて天国へと旅立った。

 四十九日も過ぎて、夫が生前着ていた衣服や書籍を整理し、相続関連の手続きにも一区切りついたある日のこと、女性は夫の部屋の収納から見慣れない箱を見つけた。アルバムが10冊ほど入っており年度ごとにきちんと分類されている。

 何の写真かと訝りながら女性はそのアルバムを開いてみた。すると、そこにはご主人と娘さんよりもはるかに若い女性との2ショット写真ばかりが、ずらりと並んでいる。特に表題がつけられていないアルバムがあり、開いてみると、裸で抱き合っているだけでなく、性行為真っ最中の様子を鏡越しに撮影した写真までもが納められていた。

 アルバムを見る限り夫と若い浮気相手女性は全国各地への旅行も頻繁に行っていた。写真に記載された日付を確認すると、夫は決まってその女性との旅行の直前、妻を連れて旅行に出ている。不倫旅行の“下見”に妻を伴う夫の周到さぶりにショックを受けた妻は、写真を見てから3週間で約10kg痩せたという。

 いずれもデジタルカメラで撮影したものをPCに取り込み写真用紙に落とし込んだものとわかるそれだった。認知症が進む前の夫は几帳面な性格でメモ魔、年齢の割にはPCを上手に使いこなし妻と娘からも一目置かれていた。

 そこでもしやと思い夫が残したPCを開く。すると、出るわ出るわ、アルバムには収め切れなかったであろう浮気相手女性との性行為中の静止画と動画のほか、A子(仮名)とタイトルのついたエクセルファイルには、「何年何月何日、A子合コン」「A子コーチのバッグ代金10万円」「2A子中絶手術、手術費・入院代など20万円」など、そこには若い女性との浮気の実態がつまびらかに記載されていた。

 もしこの実態を知らなければ、亡くなってもなお尊敬する夫、父としてその気持ちは変わることはなかったと語る。しかし事実を知ってしまった今、故人とはいえどこかやりきれない思いがあると話す。妻と娘、女性ならなおさらだ。

 大なり小なり誰にでも秘密がある。終活、とくに普段は本人だけの秘密のエリアを公衆の面前にさらしてしまう事になるかもしれない、デジタル関連ツールの終活は、やはりあらかじめ本人がすべきだ。家族がこれを行う場合、相続関連や衣類の整理など、ごく表面的なものに留めておいたほうがいいのかもしれない。

 認知症発症以来、前々から父の“デジタル終活”を行わねばと考えていた私だが、母の同級生女性と幼なじみでもある友人女性の話を聞き、生前、他人の手で終活を行うのはやはりよしたほうがいいのではと思う今日この頃である。

(フリーランス・ライター 秋山謙一郎)