われわれ人間は、やる気にかかわるユニークなメカニズムを持っています。それは、経験上、誰もが知っているメカニズムです。しかし、そのメカニズムを実際に活用できている人はそう多くありません。
たとえば、混雑する通勤電車で、イラッとしたとします。すると、その直前、脳はすぐさまあなたに、「眉間にしわを寄せて、眉を吊り上げ、口をへの字に曲げなさい」と命令を出します。表情だけでなく、姿勢や呼吸といった、全身の神経系統に、イラッとするために必要な身体の使い方を要求します。そして、イライラするような身体の使い方になるまで、あなたはイラッとすることができません。だから、あなたは電光石火の早業で、イライラするのに十分な表情や仕草を完璧に創り出します。
では、イライラする準備が万事整って、「よーし、さあイライラするぞー!」となった矢先に、憧れの先輩が電車に乗り込んできて、あなたに爽やかに「おはよう!」と挨拶したとしたら、あなたはどうなるでしょうか? あなたは反射的に、いつも先輩に見せる飛び切りの笑顔を創り出して、「おはようございまーす!」と挨拶するでしょう。そして、その瞬間、あなたが周到に準備したイライラの感情は、どこかへいってしまっているはずです。
つまり、私たちは「感情と身体の使い方を切り離すことができない」というメカニズムを持っているということです。
イライラしている人はイライラした姿勢や表情をし、やる気のない人はやる気のない姿勢や表情をしているのです。逆に、やる気のある人はやる気のある姿勢や表情をしています。このメカニズムを活用すれば、誰でも簡単に、しかも瞬時にやる気を高めることができます。やる気を高めてくれる身体の使い方の例を以下にあげておきますので、イライラしたり、気持ちが落ち込んだりしそうになったら、ぜひ試してみてください。
[1]笑顔をつくる(口角をあげ、目尻をさげる)
[2]視線を上にあげる
[3]胸を張って、堂々とした姿勢にする
[4]ゆっくりと、深く呼吸をする
【関連リンク】
『セルフモチベーション・マネジメント』
http://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=16666