「Gunosy」や「Smartnews」を筆頭に、まさに群雄割拠の時代がやってきているニュースアプリ市場。それぞれが独自の特色やUI(ユーザーインターフェース)を開発し、ファンを増やそうと手を尽くしている中、経済やテクノロジーに特化したソーシャルニュースメディア「NewsPicks(ニューズピックス)」が、新たな一手に打って出た。それが“紙の新聞”の発行だ。
“もっと自由な経済紙を”をキャッチコピーに掲げ、週刊東洋経済などの経済誌から多数の経済ニュースを取り込むNewsPicks。その特徴のひとつが、ただニュースを読むだけでなく、その記事に対する著名人や有識者によるコメントや議論などを見ることができる点。また、ほとんどのアプリが無料での利用が当たり前となっている中、有料購読プランもユーザーから好評という。
そんな“ニュースアプリ”として多くのファンを獲得しつつあるNewsPicksが、なぜこのタイミングで紙の新聞を発行したのか? 「それには2つの狙いがあります」と話すのは、NewsPicks編集長の佐々木紀彦氏だ。
「まずNewsPicksは、スマホにこだわらず、PCのブラウザ、動画、イベントなどマルチメディアでの展開を考えています。そこで、新たなNewsPicksの形を考えるにあたり、これまでは紙のメディアがWebに移行するという流れが主流になっていましたが、その逆があってもいいのではないかと思ったのです。読者が“紙”を手に取り、ニュースを読むことで、そのデザインを含めてよりNewsPicksの世界観を体感してもらえるのではないかと思います」
そして、もう一つの狙いがユーザー層の拡大というマーケティング戦略としての新聞の発行だ。
「現在のNewsPicksはIT業界で働く方やスタートアップを考えている若手の読者に多く支持をいただいていますが、より高い年齢層のビジネスマンにも見ていただきたいと思っています。発行にあたり、12月8~9日の二日間に東京・丸の内で路上配布も行ったのも、丸の内という伝統的なビジネス街で働く人々にリーチしたいという目的があったからです」
佐々木氏によると、今後定期的な発行は未定だが、好評であれば年数回のペースで出していきたいとのこと。今回の発行号は有料会員向けの配送と8日の朝日新聞の折り込み、二日間の丸の内での路上での手渡しなどで既に配布済みだが、NewsPicksが今月八重洲ブックセンター・本店と丸善・丸の内店で展開している「NewsPicksが選ぶビジネス書」コーナーでも設置しているという。
新たなネットメディアの形としての“紙の新聞”が、業界にどれほどのインパクトを与えるのか、今後に要注目だ。