全長8キロのボア・ビエジェン海岸。美しいビーチに洒脱なホテルといった景観(撮影/竹田聡一郎)
全長8キロのボア・ビエジェン海岸。美しいビーチに洒脱なホテルといった景観(撮影/竹田聡一郎)
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スタジアム「アレナ・ペルナンブーコ」。完成度はトップクラスだという(撮影/竹田聡一郎)
スタジアム「アレナ・ペルナンブーコ」。完成度はトップクラスだという(撮影/竹田聡一郎)
市場や露天が並ぶセントロ。レストランなどの価格はビーチ沿いより格段に安いが、薄暗い路地も多い(撮影/竹田聡一郎)
市場や露天が並ぶセントロ。レストランなどの価格はビーチ沿いより格段に安いが、薄暗い路地も多い(撮影/竹田聡一郎)
メトロ駅からの風景。これらの住宅はかなり上等なもの(撮影/竹田聡一郎)
メトロ駅からの風景。これらの住宅はかなり上等なもの(撮影/竹田聡一郎)

 ザックジャパンが大切な初戦(vs.コートジボワール)を戦う地は「Recife/レシフェ」と表記されているが、ポルトガル語では単語の頭文字にくるRはHで発音されるため、現地では「ヘシーフェ」と発声しなければならない。

 ついでながら書いちゃうとブラジルの通貨は「ヘアル」であって決勝の地リオは「ヒオ」である。

 さらに書いちゃうと2戦目(vs.ギリシャ)の舞台「Natal/ナタール」も、単語末の母音が付かないLは「ウ」と読むため、「ナタウ」のほうが通りがよく、Brazilだって「ブラジウ」が本式みたいだ。

 そのヘシーフェだが、多くの人は「リゾート」と形容する。水が豊富なのでベネチアに喩えられたりもする。そもそもRecifeとは岩礁が語源の地名で、大西洋に面したボア・ビエジェン海岸は整備され、プール付きのホテルや英語メニューを用意した少し値段の張るレストランが並ぶ。タクシーを少し走らせれば巨大なショッピンモールにもアクセスできる。

 4万4000人収容の「アレナ・ペルナンブーコ」は今回、日本がグループリーグを戦う3会場で唯一、昨年のコンフェデレーションズカップで使用された(イタリア―日本など3試合)スタジアムで、完成度は12スタジアム中でもトップクラスらしい。メトロ(といっても地上を走る)の駅からは少し距離があるが「試合の日はシャトルバスが輸送してくれるから問題ないだろう。ホテルもたくさんあるし、へシフェはOKだよ」と地元民は楽観している。

 彼らの言葉に嘘はないが、それがすべてでもない。

 そもそもヘシーフェは、人口あたりの殺人事件がサンパウロなどの大都市より多く、治安は良いとはいえない街だ。日本人がリゾートという言葉から抱くイメージからは、少し離れているかもしれない。美しいビーチと洒脱なホテルこそあるが、ワイキキやカンクンのように街全体がリゾートというわけではない。

 例えばメトロのレシフェ駅の構内を出ると歴史的建造物などはあれど、リゾートというより生活に密接したエリアが広がる。市場や露天が並び、観光客よりも圧倒的に地元民が多い。

 もちろんホテルやレストランはあるが、そこにはプールも英語のメニューも存在しない。ただ、価格はビーチ沿いよりも格段に安い。そのぶん、見通しの悪い薄暗い路地は多い。

 メトロもしかり。基本的には庶民の足であって、乗るとスナック、水、チョコレート、電機プラグなど、次々と物売りが現れては大きな声を張り上げて商売に精を出す。だからといってメトロが危険だということではないが、これも「リゾート」という言葉からはイメージできない現実であることは確かだ。

 ただ、ビーチから離れているスタジアムの最寄り駅や、長距離バスターミナルに向かう路線の車窓からは、あまり立派ではない家が建ち並ぶ。ここに人が住んでいるのか、といった驚きを伴うあばら家が見えることも少なくない。

 また、駅によってはタクシーの待っている駅とそうでない駅、バス停の有無や大小に差があり、無人だったり街灯が極端に乏しい場所もある。「日本―コートジボアール」は今大会唯一の22:00キックオフという遅い時間なので、サポーターはメトロ駅からタクシーを利用する場合、どの駅がベターか事前に確認しておくべきだろう。

 水が豊かで国内有数のビーチがあるリゾート。生活に密着したメトロとセントロ。

 どちらがレシフェ真の表情かは分からないが、「リゾート」という言葉だけを鵜呑みにして向かうとギャップが生まれることも確かだ。そのギャップを心にとめて、サポーターのみなさまはどうか良い旅を。