トークを披露する若宮正子。Copyright All rights reserved by TEDxTokyo 2014
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 5月31日、第6回を迎えたTEDxTokyo(テデックス・トーキョー)が渋谷のヒカリエホールにて開催された。

 TEDxTokyoとは、本家TED(テッド)同様、さまざまな分野で活躍する人たちがスピーチを行い、アイデアを共有するためのイベントである。過去の登壇者には、棋士の羽生善治、映画監督の河瀬直美、作家のC.W.ニコルなどの各界の著名人や、次世代を担う若手研究者や起業家など、ラインナップは毎回ユニークで、世界中の注目を集めている。

 ところで、今年のテーマは「Connecting the Unconnedted(つながっていないもの同士をつなげる)」。13歳(斉藤梨央・ウクレレ奏者)から79歳(若宮正子・メロウ倶楽部エグゼクティブ)まで、のべ29組がスピーチやパフォーマンスを披露した。

 活動分野やプロジェクト内容はそれぞれ異なるが、共通点として浮かび上がってくるのは「なければ自分で作ってみる、やってみる」というDIYの精神だろう。暮らしコーディネーターの青木純は、壁紙や間取りなど、空間を住人の好きなようにカスタマイズできる賃貸物件を手がけ、現代の賃貸住宅の可能性を大きく広げている。宇宙飛行士の訓練経験を持つ起業家の岡田光信は、「宇宙ゴミ」と呼ばれる、地球の周回軌道上にある不要になった人工物体が環境に与える有害性に着目し、その除去対策に取り組む世界初の企業を設立した。

 会場を最も湧かせたのは、最高齢スピーカーの“マーチャン”こと若宮正子だろう。60歳からパソコンを始めた彼女は、表計算など用途が難しExcel(エクセル)を、もっと楽しく活用して学べないかと考えたという。そこで10年前、高齢者向けに考案したのが、セルや罫線に色やグラデーションをつけてキルトやパッチワークのような図案を作成する「Excel手芸」。Excelのデザイン性に着目したこのアイデアは、マイクロソフトからも絶賛された。

 挫折や好奇心、偶然の出会いなど、自らのアイデアに辿り着いたきっかけはさまざま。だが、それを実現しようとする情熱にあふれ、努力を惜しまない人たちが語る言葉は、どれも新鮮な気づきや発見を与えてくれるものだった。TEDxTokyo代表のパトリック・ニュウエル氏の著書「TEDパワー 世界と自分を変えるアイデア」では、世界も自分も変えるアイデアはいかにして生まれ、伝わり、共有されるのか、このイベントの神髄が語られている。また今回のトークの映像は、TEDxTokyoの公式ウェブサイトにて公開されている。

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