ニューヨーク株式市場がブラックマンデー以来の急落を記録したのを受け、日経平均株価は一時1万7千円を割り込んだ。世界同時株安に歯止めがかからない/3月13日午前、名古屋市 (c)朝日新聞社
ニューヨーク株式市場がブラックマンデー以来の急落を記録したのを受け、日経平均株価は一時1万7千円を割り込んだ。世界同時株安に歯止めがかからない/3月13日午前、名古屋市 (c)朝日新聞社

 新型コロナウイルスの感染拡大が世界経済を急激に蝕んでいる。景気後退に入り消費増税後の日本にとっても、経済への打撃は計り知れない。AERA2020年3月23日号は、日本経済の状況を専門家に聞いた。

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 WHO(世界保健機関)がついにパンデミック(世界的流行)宣言に踏み切った新型コロナウイルスの感染拡大は、健康面だけでなく様々な分野に影響を広げている。中でも感染拡大防止のための移動制限や施設閉鎖、行事の休止などが経済に及ぼす影響は計り知れない。出口の見えない闘いに、社会全体が疲弊している。

「景気後退局面に入っていたところに昨秋の消費増税が加わり、そこに新型コロナウイルスが乗っかって三重苦に喘いでいる。21世紀以降の日本経済にとって最悪だったリーマン・ショックに迫る状態とも言えます」

 第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミストの永濱利廣さんは新型コロナウイルス禍の日本経済の全体状況を、そう俯瞰する。

 株安は世界的に連鎖し、かつてない先行き不透明感が市場に恐怖をもたらしている。ニッセイ基礎研究所チーフエコノミストの矢嶋康次さんはこう語る。

「企業も個人も最悪の状態がいつどのように訪れるのか予測がつけば先回りして対応できるけど、それが全くわからない。経済では不確実性が非常に高い状況下では不安が不安を呼ぶ。この不安の連鎖が始まると、封じ込めるのはしんどいですね」

 消費者の不安の一因は、マスクなど一部商品が手に入りにくくなっていることだ。街を歩き倒してドラッグストアやスーパーを回ってもマスクは相変わらず買えないし、トイレットペーパーなども、一部の店舗では今なお品薄状態が続いている。

「いつ終わるかわからないので買いだめをすることは、各個人としては正しい判断だけど、社会全体で起きると足りないことがさらに過剰反応を招く。SNSが発信する誤情報が、需要と供給のミスマッチを拡大する方向に誘導してパニックを引き起こしている」(矢嶋さん)

 2003年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行したころにはまだスマートフォンは普及しておらず、09年に世界で流行した新型インフルエンザの頃はSNSが今ほど普及していなかった。「ウイルスには○○が効く」といった根拠のないデマが一瞬で全国に流布し、売り場から様々な商品が「蒸発」する現状は、まさにSNS時代のパニックと言える。

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