仕方ないので、とりあえず酒を飲む。気づけば卒業式当日の早朝だった。大学の正門の前で友達と寝ていると守衛さんに「今日、卒業式だろ? 兄ちゃん大丈夫か?」と起こされた。フラフラとさまよいながら落研の部室へ。起きた頃には卒業式も終盤で、コッソリと潜り込み、謝恩会で周りに嫌な顔されながらまた飲んで、終了後余った酒樽をもらってきて部室でまた飲み直し。何やってんだか。バカなのか? バカなのだな。
卒業式の数日後、親から電話があった。「新聞に出てたぞ」。言われた新聞を図書館で開くと、たまたま私の卒業公演を観に来た演芸プロデューサーが感想を書いてくれたようで「こんな人、落語界に欲しい」とある。その頃は人の褒め言葉なぞ絶対に信じないひねくれたバカだったので「何言ってやんだ。ちょっと褒めりゃ喜ぶと思ってやんな!」とか思ってた。だいたい学生落語をわざわざ聴きにくるなんて胡散臭いよ、なんてね。
でも、まぁ結局私は落語家になったのだけれども、もうじき20年目。その時の演芸プロデューサーは木村万里という変わったおばさんなんだが、なんだかんだで長い付き合いで、今月23日には万里さんプロデュースの独演会がなかのZERO小ホールで開催される。この会も早19回目。チケットは完売みたいで、万里さんいつもありがとう。あの時の記事もありがとう。本当は嬉しかったですよ。面と向かって言うのも照れるのでね。これからもよろしくです。
※週刊朝日 2020年3月27日号