マスクやトイレットペーパー不足はワイドショーなどでも連日報道されている。情報は必要だ。だが、多すぎて疲れることもある (c)朝日新聞社
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AERA 2020年3月30日号より

 テレビやスマホにとめどなく流れてくる新型コロナウイルスのニュースや関連映像。自粛ムードが続き、不安も高まるが、受け取る情報の多さも疲れにつながっている。 AERA2020年3月30日号は、消費者行動とメディアとの関係から、不安や閉塞感の「正体」を分析する。

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 マスクやトイレットペーパーを求めて開店前のドラッグストアにできる長蛇の列、長引くテーマパークの営業休止、花見や歓送迎会などの自粛──。

 テレビをつければこんな映像が繰り返し流され、スマートフォンを見ればニュースやSNSのタイムラインに新型コロナの情報が並ぶ。覆い尽くすような医療や社会の情報の多さに、とらえようのない不安感を覚えた人も多いのではないだろうか。

■「予言の自己成就」現象

 自粛ムードがたちこめるなか、コンビニに行けばマスクはいつも売り切れ。おまけにトイレットペーパーやティッシュもない。その空っぽの棚を見るたびに、不安に襲われる。今回のような商品不足の現象が起こったのはなぜか。噂やデマに惑わされた結果なのか。

「噂が原因で消費者が買いだめに走ったわけではありません」

 災害情報論が専門の東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センターの関谷直也准教授(44)は、そう指摘する。

 メディアでトイレットペーパーの売り切れの様子が報道されたりネットでそれについてのコメントや写真が出回ったり、また、店舗で売り切れている状況を直接見ることによって、心配になった人が購入する。その状況がまたメディアに報じられる。

「この繰り返し自体がトイレットペーパー不足という現象を引き起こしているといえます」(関谷准教授)

 実際は不足していないのに、「トイレットペーパーが不足している」という状況認識に基づいて購入に走るという行動を多くの人がとることによって、「不足」が事実化していくという流れだ。関谷准教授が続ける。

「これは『予言の自己成就』と呼ばれる現象です」

「予言の自己成就」とは、何らかの予期が単なる思い込みだったとしても、意識的または非意識的にその予期を実現するような行動をとることによって現実になることがあるという社会学の用語だ。

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