■少数派の行動が拡散
関谷准教授とサーベイリサーチセンターが行った「新型コロナウイルス感染症に関する国民アンケート」の調査結果では、新型コロナウイルスを知ってから現在までの買い物の変化として、トイレットペーパーを「通常よりも多めに買った」か「通常よりも多めに買いたかったが、買えていない」が合わせて16.8%、残りの8割以上は「通常と変わらない」か「買っていない」と答えた。
「普段よりも余計に買った人は1割から2割くらいで、ほとんどの人は普段と変わらない行動をしています」(関谷准教授)
たった1割か2割の人の行動が波及し、それがメディアを通して拡散されることによってこのような事態に陥っているといえる。また、災害時はガソリンなどの燃料不足で輸送が遅れ物資不足が起こるケースはあるが、今回はそれとは違う。購買行動が原因で起こっているので、本来はすぐに解消されてもおかしくない。しかし、解消されずにいる状態だ。
「そもそも一番の問題は、新型コロナウイルスの感染拡大に対する不安なので、感染症を広げないことが大事です。それをあたかも噂や物不足の方が混乱の要因であるかのように言うこと自体が問題だと思います」(関谷准教授)
世界保健機関(WHO)は3月11日、新型コロナウイルスの感染拡大について、世界的な流行を意味する「パンデミック」の状態だと認定したが、それ以前の2月2日の段階で、新型コロナウイルスの感染拡大には「巨大な『インフォデミック(infodemic)』」が伴っていると警告していた。これは「正確なものとそうでないものが入り交じった過剰な情報が、信用に値する情報源と信頼できるガイダンスを必要な時に見つけることを難しくしている」 ことからだった。SARSや中東呼吸器症候群(MERS)といったいままでのケースと、新型コロナウイルスの大きな違いだとも指摘されている。
■1週間で2千万のコロナ関連ツイート
では、ツイッターではどれくらい情報が流れているのか。
3月10日からの7日間で書き込まれた新型コロナウイルスに関するツイート数(言語別)の調査をツイッター社に依頼した。すると、グローバルで英語が約4900万だったのに対し、日本語は2千万。スペイン語は610万、イタリア語は120万だった。「ツイート好き」で知られる日本だが、この数はやはり多い印象だ。
一連の「コロナ疲れ」は、正しい情報もデマもないまぜにした情報過多がもたらしているといえなくもない。そして、いつの間にかその感覚にも麻痺(まひ)し、「もういいや」と消沈してしまう。