若者から支持されない理由には、古いお笑い界の体質にあるという声も。バラエティ番組を手掛ける放送作家は言う。
「おふたりとも師匠と弟子、兄さん・姉さんというお笑い界の徒弟制度の中で育ってきたわけですから、当然、ときに若手に苦言を呈するような振る舞いをします。ところが、毒舌で叱ったり、心無い言葉で突っ込んだりとトーク番組で舌鋒鋭くガンガン攻めるようなスタイルはいまの若い人には受けないのです。高圧的に映ってしまうので若い視聴者は引いてしまうこともあります。その上、彼らがまだ若手の頃にお笑い界を変えた歴史を知らない人たちばかりです。制作サイドも同じようなことが言えます。高齢になっても口だけは攻撃的でイケイケ、なのにアイデアも出さないので若手スタッフから嫌がられることが少なくない」
たけしやさんまのトークで見せる毒は、政治や社会に直接、文句を言う手段がなかった世代にとってはある種の痛快さがあった。だが、今の若者はツイッターなどのSNSで外の世界に向かって何でも発言できてしまうので、さして面白みもないという。では、一方で所やタモリはなぜ支持されているのか。
「タモリさんや所さんは、趣味を通して若い人たちとも上手に絡み、わかりやすく若手からも突っ込ませたりして昔と変わらずはしゃいでいる姿を番組で見せている。しかもマニア級の趣味をたくさんもっていてそれがそのまま番組になっていたりするので、年代を問わず誰が聞いてもおもしろい話ができる。たけしさんやさんまさんのように巧みなトークよりも、そういう人がたまに繰り出す毒のほうが圧倒的に面白く映るのでしょう」(バラエティ番組制作スタッフ)
お笑い評論家のラリー遠田氏はこう分析する。
「たけしさんとさんまさんはやはり根っからの芸人なので、笑いに対するこだわりが強く、後輩の芸人に対しては先輩としてわざと高圧的な態度をとることもあります。彼らの過去の功績を知らない若い世代の視聴者にとっては、そういうところがパワハラ的で悪い印象を与えているのかもしれません。所さんはもともとミュージシャンですし、タモリさんは赤塚不二夫さんの紹介がきっかけで芸能界入りしていて、いわゆる芸人の世界から出てきた人ではありません。この2人はそもそも芸人であるという自意識がないため、権威や序列に縛られず、のびのびと行動することができます。それが共演者や視聴者にも好印象を与えているのです」
所やタモリが長年、培ってきた“ゆるふわ”なイメージこそが、幅広い年代からの支持を獲得する要因と言えるだろうか。(黒崎さとし)