経済危機は確実に進行しているのに、日本だけ対策が遅れている。この状況が深刻化すれば、どうなるのか。前出の藤井教授は言う。
「1997年4月に消費税率が3%から5%になった時、同年7月にアジア通貨危機が起きました。そこから日本経済の転落が始まります。自殺者が急速に増え、98~07年の10年間は、それ以前の10年間と比べて推計で年間平均約1万人、合計で14万3048人が亡くなりました。新型コロナはたしかに危険です。しかし、経済危機で自殺する人は、新型コロナで亡くなる人よりはるかに多くなる可能性があるのです」
自民党内でも、もっと積極的に財政出動をして、国民の生活を支えるべきだとの意見も出ている。
30日、自民党の議員15人が会見を開き、6月から消費税を5%に下げ、食料品などに限定されている軽減税率を0%とし、全品目に軽減税率を適用することを求める声明を発表した。事実上の「消費税ゼロ」である。そのほか、国民全員に10万円の現金給付、自粛によって失われた売り上げを補填するために、中小企業向けに粗利を補償することを要望した。呼びかけ人の安藤裕衆院議員は、こう話す。
「現金給付や消費税ゼロというと『支援は生活困窮者に限定すべきだ』との批判があります。しかし、今はそんなことを言っている時間はない。現金がなくて命を絶つ人が続出する前に、まずは必要なものを届けることが先決です。また、霞が関の官僚も地方自治体の職員も、感染症対策で疲れ切っている。そこに現金給付に所得制限を設けると、事務作業がさらに増え、職員が疲弊してしまう。こんなことは避けるべきです」
現金を給付することで将来の見通しができれば、飲食店やイベント事業者も「休業する」という選択肢が生まれる。
「今の時点で『粗利補償をする』『現金給付をする』と政府が言えば、一時的に金融機関から融資を受ける決断もできる。感染症拡大防止のためにも、今は安心して休業してもらったほうがいい。そうすれば、新型コロナを早く終息させることができ、一気に景気回復に向けてエンジンをふかすことができる。私達の声明は『廃業しないで』、『あきらめて命を絶たないで』というメッセージなのです」(安藤議員)