ドイツは従業員5人以下の事業者に最大9000ユーロ(約108万円)を一括払いする。特にフリーランス(個人事業主)の多いアーティストへの支援が手厚く、グリュッタース文化相は「私たちは誰も失望させない」など、繰り返しメッセージを発信している。カナダは、新型コロナの影響を受けた人すべてに月2000カナダドル(約15万円)を給付するほか、学生ローンの返済も3カ月猶予する。
日本のフリーランス支援はどうか。現金給付は全国一斉休校の影響で仕事を休んだ子供を持つ親のみが対象で、一日4200円が支払われるだけ。ライブやスポーツイベントなど、政府の要請でイベントが中止になっても、経済的な補償はない。
日本でも、フリーランスには文化・芸術活動に関わるアーティストも多い。そこで、宮田亮平文化庁長官は27日に声明を発表。ところが、内容は「ウイルスに打ち勝つために、文化庁長官として、私が先頭に立って、これまで以上に文化芸術への支援を行っていきたい」、「明けない夜はありません!」などと記されていただけで、具体的な経済補償は何も書かれていなかった。インターネットでは、精神論ばかりの内容に「ポエム」との批判が殺到。ロックバンドKing Gnuの井口理は「すでにみんな1ヶ月仕事を失ってるんだから一刻も早く補償をしましょうよ!」とツイッターで訴えた。
もちろん、日本でも経済対策が議論されていないわけではない。
28日の記者会見で安倍首相は、経済対策の事業規模について09年のリーマン・ショックで麻生内閣が行った約56兆8000億円を超えるとの見通しを示した。しかし、赤字国債の発行額は「15兆~20兆円程度」(自民党議員)で、残りは通常の予算を新型コロナ対策名目に付け替えるだけになる可能性もある。
しかも、その内容は他国にはない珍妙なものもある。前述の通り、世界が現金給付で“コロナ恐慌”を乗り越えようとしているのに対し、政府・与党は「商品券」を軸に検討が進んでいる。一時は、自民党内で和牛が買える「お肉券」や水産品向けの「お魚券」も検討されたが、国民から批判が殺到し「購入支援の取り組み」にトーンダウンした。現金の給付も、生活に困っている世帯に限定する方向で調整が進んでいる。