東京で感染拡大を食い止められるかどうかは、今や日本全体とウイルスとの闘いにおける天王山になった。小池知事はこの歴史的な危機は「チャンスにもなり得る」との見方を示す。
「日本が医療面で世界に貢献できるチャンスでもあり、東京五輪・パラリンピックは社会や経済を立て直していく上で大きな目標であり希望でもあります。もし中止ならそれも消えていたわけですから。そこを目標にしながら、都民の協力を得て、この難局を乗り越えていく。それを性善説に立ってやるのか、性悪説に立ってやるのかは、国の構え、形の違いだと思います」
「性善」「性悪」とはどういう意味なのか。
「日本は自粛ベースですよね。外出禁止を守らなかった人に罰金を科すとか、インドのように警官がスクワットをやらせるわけでもなく。英フィナンシャル・タイムズの記事に、日本はソーシャルノーム(社会規範)が非常に高い、とありました」
だが小池知事はインタビューの後、記者団に対し、国が緊急事態宣言を出した場合「(外出自粛要請から)指示という形になる」と話した。日本人の社会規範に頼るには限界もある、との認識があるようにも見える。
予定時間が過ぎ、席を立ちかけた小池知事に、最後に「いま大変な修羅場ですが、自宅で一息ついたときに読んでいる本や、思い浮かべているリーダーはいますか」と問うと、即座に「やっぱり後藤新平ですね」との答えが返ってきた。
後藤新平は関東大震災後、帝都復興計画を立案し、現在の東京の都市計画の礎を築いた。執務室に戻る知事の背中に、「どういうところが?」と問うと、「本を読んでください」と煙に巻かれた。小池知事は「東京の再生」を自ら牽引するイメージを既に描いている。(編集部・渡辺豪)
※AERA 2020年4月13日号