拘置所は独居房をのぞき、1つの部屋に5人前後の収容者が雑魚寝するのが一般的だ。外に出ることができるのは運動の時間だけ。それも限られたスペースで体を動かすくらい。「密閉、密集、密接」の三密が24時間、続くのだ。

「拘置所や刑務所はまさに、三密です。収容者の逃亡防止や集団生活なので、その処遇からも目が届きやすくするためです。それが新型コロナウイルスには、最も悪いというのですからどうしようもありません。刑務官も収容者もマスクをつけ、手洗いやうがいなどを徹底してきた。それでも感染してしまった。三密なので、広がるととんでもないことになる」(前出・刑務官)

 大阪拘置所の収容者の一人は面会が禁止となる直前、記者に苦笑してこう語った。

「普段、オヤジ(刑務官)は厳しいが、いまはコロナがあるからか『体調はどうだ』『熱はないか』などとえらく優しい」

 収容者の大半が、刑が確定すれば、刑務所に身柄を送られる。大阪拘置所から収容者を多く受け入れている大阪刑務所刑務官はこう話す。

「全体の30%くらいは大阪拘置所からではないのか。拘置所以上に刑務所は三密だ。万が一のことがあっては、と刑務所はピリピリと緊張状態だ」

 一方、大阪拘置所のコロナ感染で頭を抱えるのは、京都府警だ。昨年7月、京都アニメーション放火殺人事件で、大やけどを負った青葉真司容疑者は現在も京都市内の病院で治療中。逮捕に至っていない。だが、事件から1年近く経過し、逮捕が近いのではとみられている。

「実は青葉容疑者は、事件現場に近い伏見警察署で逮捕して、身柄を施設が充実している大阪拘置所に移送する予定だった。しかし、大やけどで抵抗力が落ちている青葉容疑者が新型コロナウイルスがまん延しつつある大阪拘置所に入所して大丈夫かという議論が起こっている。困ったものだ。しばらくは逮捕が難しくなるかもしれない」(警察庁関係者)

 イタリアでは新型コロナの対策に抗議し複数の刑務所で暴動が起きた。日本もそうならないことを祈るばかりだ。(本誌取材班)

※週刊朝日オンライン限定記事