小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP社)が発売中
小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP社)が発売中
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4月1日、記者会見する専門家会議の尾身茂・地域医療機能推進機構理事長(右から2人目)ら (c)朝日新聞社
4月1日、記者会見する専門家会議の尾身茂・地域医療機能推進機構理事長(右から2人目)ら (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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「自分が患者になることを想定し、万が一重症化した際にどんな医療を受けたいかを、タブーなく家族と話しておいてほしい。人工呼吸器が不足したときの優先順位を医療者だけが決めるのは非常に酷である。心の備えを」。4月1日の専門家会議の記者会見で、武藤香織・東京大学医科学研究所公共政策研究分野教授はそう提言しました。

 延命治療を続けるか否か、本人の意思表示があれば医療者の助けになるというのです。衝撃的ですが、非常に率直で真剣な提言だと思います。専門家会議副座長の尾身茂・地域医療機能推進機構理事長は、医療崩壊は感染爆発の「前に」起きると強調しました。欧州のような感染爆発が日本でも起きることを想定することが必要だとも。そのときは、助かる見込みがない人より他の患者を優先しなくてはならない事態が起こり得るのですね。

 尾身氏は、欧米のような「爆発的患者数の増加」は、2~3日で累積患者数が倍増し、それが継続して認められる状況を指すとし、東京都では3月21日から30日までの10日間で、2.5日ごとに患者数が倍増しているが、院内感染やリンクの追える患者も含まれているので、一過性のものかどうかも含めて継続して注視すると述べました。この原稿が記事になっているときの状況が非常に気がかりです。

 この日、安倍首相は1世帯あたり2枚の布マスクを配布することを決定。ないよりはマシです。でも今は、政治判断の遅れで、打つべき手を打てなくなってしまう。日本に残された準備の時間はごくわずかです。外出禁止は? 現金給付は? 病床や器具や人員の確保は? 国の判断は、都の決定は。

 グテーレス国連事務総長は、新型コロナウイルスの流行を国連創設以来75年間で類を見ない危機だと表明。安倍首相の決断が、文字通り私たちの命を左右する局面なのです。

(この記事は緊急事態宣言発令前に執筆され、AERA2020年4月6日号に掲載されました)