「いい漢方治療」を受けるには、何といっても医師選びが大切である。そもそも、満足のいく漢方治療を受けられるかどうかは、医師との出会いによって決まる。なぜなら、科学的に証明された標準的な治療に沿う西洋医学に対して、漢方医学は患者の病態に合わせて治療を決める個別治療であるからだ。このため、同じ患者でも医師によって治療方法が異なるということが珍しくない。

 では、漢方の名医とはどんな医師を指すのか。本誌は、日本の漢方界を牽引してきた日本薬科大学学長の丁宗鐡(てい・むねてつ)医師、あきば伝統医学クリニック院長の秋葉哲生(あきば・てつお)医師、北里大学東洋医学総合研究所所長の花輪壽彦(はなわ・としひこ)医師の3人に、漢方における「名医」の条件について聞いてみた。

 まず一つ目の条件は、「漢方医学の概念を治療の基本としている」こと。例えば単に漢方薬を処方するだけではなく、「未病」や「養生」といった漢方独特の概念をふまえて治療をすることである。

 二つ目は、「漢方医学にのっとって診察・診断する」ということ。患者に適した漢方薬を処方するためには、病名ではなく「証(しょう・病態)」の診断が欠かせず、そのためには「舌診(ぜっしん)」や「脈診(みゃくしん)」を採り入れた漢方の伝統的な診察法を用いることが必要となる。

 三つ目は、「西洋医学における専門領域の知識がある」ということ。現代は漢方治療といっても西洋医学的な検査をしたり、西洋薬を処方したりすることもある。その必要性を見極めるためにも、西洋医学における専門領域の知識が重要なのだ。漢方を専門にしているかどうかの一つの目安となるのが、日本東洋医学会が認定する専門医の資格だ。この資格を取得するには、西洋医学の専門領域を持っていることが条件になる。

※週刊朝日 2012年6月8日号

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