世界中に感染が拡大する新型コロナウイルス。感染予防のためには手洗い、うがいが欠かせないが、多くの人は、口や鼻からの感染だけに注意が向いているのではないだろうか。しかし、新型コロナウイルスは、目からの感染の可能性があるという。日本眼科学会と日本眼科医会は、国民に向けて注意を呼びかけている。
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日本眼科学会と日本眼科医会は4月初旬、連名でそれぞれのホームページに、「新型コロナウイルス感染症の目に関する情報について(国民の皆様へ)」と題する文書を発表した。日本眼科学会のホームページには、
<新型コロナウイルスは口や鼻といった上気道の粘膜から感染しますが、目の粘膜組織である「結膜」からも感染する可能性があります。>
という記載がある。新型コロナウイルスが、口や鼻からだけでなく、目の結膜からも感染する可能性がある、と説明している。
新型コロナウイルスの感染ルートとしては、飛沫感染(ひまつかんせん)と接触感染の二つが考えられている。厚生労働省のホームページによると、
(1)飛沫感染 感染者の飛沫(くしゃみ、咳、つば など)と一緒にウイルスが放出され、他者がそのウイルスを口や鼻から吸い込んで感染します。
(2)接触感染 感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後、自らの手で周りの物に触れると感染者のウイルスが付きます。未感染者がその部分に接触すると感染者のウイルスが未感染者の手に付着し、感染者に直接接触しなくても感染します。
とある。飛沫感染により、直接ウイルスが目に侵入する場合と、接触感染によりウイルスが付着したままの手で目をこすることで侵入する場合の、両方が考えられる。
では、なぜ目の「結膜」から感染する可能性があるのだろうか。
結膜は、上下のまぶたの裏側と目をつないでいる半透明の膜。目の粘膜に該当する。
粘膜とは、表面が粘液で潤っている膜で、食道や胃、気管など管状の器官においてはもっとも内側にある組織だ。主に吸収や分泌の機能を担っている。ウイルスが口や鼻から侵入した場合、食道や気管などの粘膜に付着して感染すると考えられる。