AERA 2020年4月20日号より
AERA 2020年4月20日号より
この記事の写真をすべて見る
Slackにおける同校キャリア支援部の鈴木さんと生徒のやり取り。今後の受験についてアドバイスしている(写真:N高等学校提供)
Slackにおける同校キャリア支援部の鈴木さんと生徒のやり取り。今後の受験についてアドバイスしている(写真:N高等学校提供)

 日本唯一の「ネットの高校」として4年前に開校したN高から、初めて東大合格者が誕生。その背景には、チャットツール・Slack(スラック)などを活用した進学を希望する生徒に対する丁寧な指導があるという。

【写真】N校キャリア支援部の鈴木さんと生徒のやり取りはこちら

*  *  *

「まるで進学校のようだ」

 ドワンゴの夏野剛社長(55)は、3月18日に開いたオンライン会見でこう語った。授業がすべてオンラインで行われる日本唯一の「ネットの高校」、N高等学校(N高)を同社が開校したのが4年前。今春、同校から初めて東大合格者が誕生した。

 合格したのは、N高の1期生で、昨年ネットコース特進専攻を卒業した男子生徒(19)。現役時は合格ラインに10点ほど足りず不合格だったが、1年の浪人を経て東大理科一類に合格した。男子生徒はこう語る。

「浪人してから塾に通いましたが、成績が伸び悩んでいることをN高の職員に相談し、夏頃からチャットツールのSlack(スラック)を通して勉強法や学習計画のサポートを受けました。現役中も浪人中も、面談は家でしてもらえるし、記述式問題は解答を写真に撮って送れば添削してもらえる。機動性が高くてありがたかったです」

 この男子生徒は高校1年生の12月まで、別の通信制高校に通っていた。だが授業に退屈さを感じ、コンテンツが豊富な同校に編入を決めた。N校の在校生は無料でオンライン予備校「N予備校」の講座を受講できる。

 男子生徒は半年ほどで必須科目を修了後、N予備校のコンテンツで苦手な化学を勉強。得意な英語は独学で進めるなど、N高のシステムを活用しながら自分に合った勉強を見つけだした。

 N高の特色の一つに、高校卒業のためにかかる拘束時間を最小限にとどめ、生徒が学びたいことに多くの時間を割けることがある。決まった時間割はなく、生徒は自分で授業のスケジュールを組む。ボーカロイドの作曲家が教鞭をとるなどユニークな授業が存在し、フィギュアスケートの紀平梨花選手(17)が在籍することでも知られる。今や生徒数1万人以上の“マンモス校”だ。一方で開校当初は、進学を目指す生徒に対する支援が十分とは言えなかった。

次のページ