新型コロナウイルスの感染拡大を受けて7日に緊急事態宣言が出され、日本でも外出や営業の自粛が広まりつつある。そこで関心が集まるのが、経済へのダメージだ。政府は108兆円規模の緊急経済対策を閣議決定。収入が減った世帯に対する30万円の給付、中小企業向け特別融資などを含むが、それで十分なのか不安を抱く人もいる。感染者数が20万人に迫り(13日現在)、世界最悪の状況に直面する米ニューヨーク(NY)では、どのような対策がとられ、実際に人々の生活はどうなっているのか。NY在住記者がリポートする。
ここNYで必要不可欠な職種以外に在宅勤務を義務づける「外出制限令」が敷かれたのは3月22日。こうした施策に対し、トランプ大統領は経済の悪化を懸念するが、NY州の新型コロナウイルス対策を主導するアンドリュー・クオモ州知事の意見は異なる。「アメリカ人であれば皆、人の命は金には変えられないと言うはずだ。我々が第一にやらなければならないことは人命を救うことである」と会見の中で強調した。
クオモ州知事が打ち出した対策は多岐にわたるが、象徴的なものの一つが演劇やミュージカルで有名なブロードウェーにある全ての劇場の閉鎖であった。知事は外出制限令を発令する1週間以上も前の3月12日に500人以上が集まることを禁止し、それに伴い劇場の閉鎖を決めた。
どのような影響が出たのか。観光客や劇場の訪問客によって支えられていた周辺のレストランやショップなどが、次々に一時閉店に追い込まれて行った。そしてその余波は、労働者に及んでいく。
ナタポン・ユスリさん(37)はタイ料理店でウェーターをしていたが、劇場閉鎖後すぐに一時閉店が決まり、解雇されたという。彼は4年前にタイから移住した。現在の収入はゼロで、タイ料理店はいつ再開するのかわからず、家賃をどうやって支払っていけばいいのかと不安を隠せない。
「(NYは)眠らない街と言われているけれども、いまは全く眠ってしまったようだよ」と語る。
失業した人びとが巷にあふれ、「ファイナンシャル(金融の)パンデミック」という言葉も聞かれるようになった。