

ギャンブル好きで知られる直木賞作家・黒川博行氏の連載『出たとこ勝負』。今回はコロナウイルスと年寄りについて。
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コロナウイルス禍による緊急事態宣言のせいばかりではないが、日がな一日、家にいる(毎月のテレビ局の会合も、東京で開かれる文学賞の選考会や贈賞式も軒並み延期になった)。そもそも、わたしは極端な出無精で、外出といえば、土日のテニスと、よめはんの荷物持ちで近所の市場やスーパーの買い物につきあうくらいだから、日々の暮らしに変わりはない(よめはんはデッサン会が中止になったり、展覧会に行けないのが不服らしいが)。
で、家にいるわたしはなにをしているのか──。
このところのマイブームはお気に入りの映画DVDを見ること。いままで集めてきたビデオカセットとDVDを書棚から出しては一・五倍速の早送り(ここというシーンは通常再生)で見る。
先日、試写会で見た『燃えよ剣』がよかったので、同じ新選組ものの『壬生義士伝』を見た。主人公の自死シーンからは少しダレるが、エンターテインメント時代劇としては上出来だろう。映画は監督だと再認識。
『グッドフェローズ』もよかった。監督はマーティン・スコセッシ。そう、あの『タクシードライバー』もスコセッシの作品だ。近作の『アイリッシュマン』を早く見たい。
──と、そんな日々を送っているところへ、友だちのNから電話があった。なにしてんねん、という。「なにもしてへん。家に閉じこもって仕事してる」「そら、捗(はかど)るな」「でもない。金魚やメダカの世話で忙しいし、よめはんと毎日、マージャンしてる」「賭けてするんか」「賭けへんマージャンがどこにあるんや」「よめはんから金とって、うれしいか」「たとえ千円でもうれしいな」「おれはもう退屈でしゃあない。誰も遊んでくれへんし」「パチンコは」「行かへん。どこも閉まってる」「開いてたら行くんか」「かもな」
Nは軽度の肺気腫であるにもかかわらず、外出自粛要請が出てからもパチンコホールに日参していた。そういう破れかぶれの年寄りも世間にはいる。