安倍首相がPCR検査の実施数を1日2万件に増やすとブチ上げたのは4月6日だ。それから2週間も経つのにまったく追いついていない状況だ。保健所や地方の衛生研究所のほか、民間の検査会社や大学病院が参入してきているというが、検査が受けられない“検査難民”は増えるばかりだ。
開業医が自ら行わなければならないほど、検査場所や人員が不足しているのだろうか。保健所に問い合わせると、担当者は理由を次のように説明した。
「開業医の先生方にはあくまで可能な範囲でお願いしたのであって、言葉が足りなかったかもしれず大変申し訳ない。いま東京都のコロナ外来(帰国者・接触者外来)には患者さんが殺到しており、そちらの負荷が大きくなっている状態です。院内感染や体制の破綻が始まってきているのです。そこで開業医の先生方にも可能な範囲で、防護服などの装備をきちんとしたうえで検査を実施して頂くことで都民のニーズにお応えできるのではないか。決して一律にすべてのクリニックにお願いするということではなく、対応が可能であれば防護服などは提供するということなのです」
クリニックで他の患者を感染のリスクに晒さないためにはどうするべきなのか。その対策を講じるのは非常に難しい。
医療機関などで採取された検体を受け取り、実際にPCR検査に従事するのは臨床検査技師だ。業界団体である「日本臨床衛生検査技師会」の役員の一人に話を聞いた。
「検体採取は確かに非常に手間がかかります。採取した検体は保存液に入れてPCR検査に回されるわけですが、容器を何重かに包装して密閉しなければなりません。指定感染症になっていますから、血液を運ぶのとちがって、より厳格な搬送の規定があるのです」
PCR検査は時間がかかるとか、擬陽性や偽陰性が起きるなど精度の問題がたびたび指摘されるのはなぜだろうか。技師会の役員はこう解説する。