エムディさんには、2月以来連日続くドラッグストアの開店前の行列は異常に見えた。
「あれではコロナの防止にはなっていませんよ。『ここにくれば、もう並ばなくていい』って、おばあちゃん、おじいちゃんたちが、すごく喜んでくれたんです」
通販より低価格で売っているのはなぜかと尋ねると、滑らかな日本語で話した。
「私が開業して3年になるのですが、これまで日本人にはとてもお世話になりました。だから、安く販売してるのはその恩返しなんです」
ところで、どうして大久保の韓流ショップがマスクを大量に販売できるのだろうか?
別の雑貨店の店長はこう解説する。
「アクセサリーや雑貨のほとんどは中国製です。それで、それぞれの店が中国に強い商社にツテがあるからじゃないでしょうか。なかには直接、中国のメーカーと取引している店もあるそうです。当店も4月第2週に入荷があり、それからは切らしていません」
一方、「中国から横浜港に到着するコンテナに、マスクや医療品が目立つようになってきた」と証言する港湾関係者もいる。
「主に上海(シャンハイ)からの船ですね。4月初旬から毎日、10本以上来てますよ」
ある大手運送会社のトレーラーの運転手は4月上旬、マスクを満載した40フィート(約12メートル)のコンテナを2日連続で運んだ。
「青海(江東区)のデバン場(コンテナヤード)から、さいたま市郊外の倉庫まで運びました。そこで4トントラックなどに積み替えられて、問屋などに運ばれるようです」(前出の港湾関係者)
40フィートコンテナの容積は約67・5立方メートル。例えば、冒頭で紹介した店が販売していた、マスク50枚入りの箱が80個入る段ボール箱(52センチ×29センチ×62センチ)を詰め込んだとすると、1コンテナに少なくとも600箱は入る計算だ。マスクの枚数にして計240万。