家賃滞納者ブラックリスト、クレジットヒストリーにより、賃貸住宅の入居が困難になる状況を見てきたが、今後は住宅を探す時だけでなく、仕事探しや婚活にも同様の問題が起こる可能性がある。これらの個人情報を信用スコアとして点数化して、一元的に管理しようという動きが出てきているからだ。信用スコア先進国は中国である。
中国では、Alibabaグループが展開する電子決済サービス「Alipay」と連携した信用スコアサービス「芝麻信用」が存在感を増している。「芝麻信用」は、中国国内で6億人以上と言われる「Alipay」ユーザーの全支払い履歴データを管理しているだけでなく、資産状況、社会的ステータス、SNS上での人脈などの情報を加味した上で、個人の信用力を点数化(スコアリング)している。
スコアは、350点~950点の間で点数化され、700点以上で良好とされるという。高スコアを得ると、賃貸住宅や各種ローンの審査に通りやすくなったり、シェアサービスなどのデポジット(保証金)を免除されたり、出国手続きが一部簡素化されるといったメリットがある。逆にスコアが低いと、住宅、就職、結婚などで不利になってしまう可能性がある。
中国政府は、2014年から「社会信用システム」を構築するという7カ年計画を進めており、信用スコアを普及させることで不正取引を減らそうとしている。中国社会における信用スコアの急速な普及の背景には、こうした政府の姿勢があることは明らかだ。
■貧困状態を固定化しかねない「バーチャルスラム」
日本でもAIを用いた信用スコアサービスが広がりつつある。みずほ銀行とソフトバンクによって設立された「J.Score」は、顧客から提供される情報に基づいて、信用力や将来の可能性をスコア化するサービスを2017年から始めている。
Yahoo!やNTTドコモ、LINE、メルカリも、信用スコア事業に参入したり、参入を表明したりしている。しかし、2019年6月3日にYahoo!が発表した「Yahoo!スコア」については、スコアの外部企業への提供に批判が集まり、Yahoo!が6月21日に「説明の至らない点があったことから、みなさまに多大なご心配をおかけしたことを、おわび申し上げます」、「6月中旬より、ソーシャルメディア上の一部投稿において、『自分の(個人)情報が勝手に外部に提供される』と心配されるご意見が多くありましたが、『Yahoo!スコア』では、お客様の同意なくお客様の情報やスコアを他社に提供することはありません」という声明を発表する事態になった。