コロナ禍の影響で、葬儀のスタイルにも変化が表れている。「3密」を避けるため、ネット上で故人を弔う「オンライン葬儀」を手がける企業も現れ始めた。先駆けて体験した利用者に、その革新的な弔い方を詳しく聞いた。
葬儀も戒名もいらない…「自分らしい終わり方」にこだわった有名女優
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4月上旬、東京・千代田区の映像制作会社経営者の男性(44)のもとに、フェイスブックのメッセンジャーが届いた。取引先企業で代表取締役だった知人が、同月5日に脳幹出血で亡くなったという訃報だった。まだ30代後半。彼とは取引先として、そして友人として、10年以上の付き合いになる。まだ若いのに、どうして。あまりに突然の死だったため、まるで実感がわかなかった。
そんな男性の元に、もう一つ、意外な案内が届いた。
なんと、故人の葬儀は「オンライン」で行うという。案内には、故人が生前「俺が死んだらオンライン葬儀をやりたい」と冗談交じりに口にしていたこと、「コロナの拡大」で参列に行けない状況を考慮し、異例のスタイルで葬儀を執り行う旨がつづられていた。男性の知る故人も、新しいものが大好きで、先進的な人。男性は「あの人らしいな」と思い、参列を希望した。
数日後、オンライン葬儀を閲覧するためのURLが送られてきた。葬儀の様子はYouTube上でライブ配信され、知人のみに限定配信される仕組みのようだった。
葬儀当日の16時前。男性は自室のパソコンの前に座った。配信が始まるまでの間、故人が好きなアニメのイラストが画面を彩り、よく聞いていたアーティストの音楽が流れる。映像制作会社の強みを生かした粋な演出だと思った。「どんな葬儀になるのだろう」。故人への悲しみとともに、オンライン葬儀というシステムへの好奇心も芽生えた。
16時、配信が始まった。主催者と数人のスタッフがいる画面の向こうは、会社を改装したセレモニー会場が映っている。故人の遺影や生前に愛用していた仕事道具、スタッフたちの悲しそうな表情が映し出されると、画面越しであっても、悲しみがわいてきた。男性はこの時初めて、友人の死を実感したという。
「画面越しであっても、会場にいる彼らと同じ気持ちになりました」