この10年間に治療法が格段に進歩し、患者の選択の幅が広がった下肢静脈瘤。命にかかわることは少ないものの、痛みやかゆみ、こむら返り、あるいは見た目の悪さなどで生活の質(QOL)を低下させる恐れもあり、早めに的確な治療を受けたいところだ。
下肢静脈瘤とは、おもに下肢の皮膚表面に近い部分の静脈(表在静脈)が浮き上がったり、蛇行しながらボコボコとこぶのように膨れ上がったりする病気だ。進行するにつれて、下肢のだるさや痛み、むくみ、かゆみ、寝ているときのこむら返りなどの症状が出る。さらに重症化すると、足に黒色の色素沈着が起きたり、潰瘍ができたり、血液が固まる血栓ができることもある。
足には、心臓から送られてきた血液を心臓に送り返す役割がある。下肢静脈瘤を引き起こす表在静脈は、その血液の通路の一つだが、血液が逆流しないよう、多数の弁が存在する。その弁が壊れ、血液が逆流し、静脈が拡張した状態が下肢静脈瘤だ。
下肢静脈瘤には複数の治療の選択肢があるが、なかでも最新の治療法が血管内レーザー治療だ。東京の北青山Dクリニック院長の阿保義久医師が解説する。
「患部の表在静脈の中にレーザーファイバーを入れ、静脈をレーザーで焼灼して閉塞させる治療法です。日本ではここ数年の間に広く知られるようになりました」
血管内レーザー治療の利点は、施術時間は片足20~30分程度、入院することなく日帰りで治療を受けられ、からだへの負担が少ない。また、レーザーは基本的に針で挿入するため、切開の必要がなく傷跡がないことなどが挙げられる。
とはいえ、いいことずくめではない。歴史の浅い治療法のため、10年を越えるような長期予後は不明。また保険が利かないため、自費診療となることだ。だが、2011年1月から一部のレーザー治療に保険の適用が認められた。
手術費用(片足)は保険が適用されない最新レーザーだと25万円(税別)、保険が適用される3世代ほど前のレーザーだと3割負担で総額8万前後(術前、術後の検査費用などは除く)となる。
※週刊朝日 2012年5月18日号