中田馨さん(42)/兵庫県西宮市の認可保育園施設長(写真:本人提供)
中田馨さん(42)/兵庫県西宮市の認可保育園施設長(写真:本人提供)
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河津誠さん(57)/地獄温泉「青風荘.」代表 (c)朝日新聞社
河津誠さん(57)/地獄温泉「青風荘.」代表 (c)朝日新聞社

 コロナ禍にある今、あらゆる場面で自粛が叫ばれているが、一方で自粛できない事情を抱えた人もいる。AERA 2020年5月4日-11日合併号では、そうした人たちの話を聞いた。

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●3密回避は無理 感染と隣り合わせ
中田馨さん(42)兵庫県西宮市の認可保育園施設長

 保育所で“3密”を避けるなんて不可能です。うちの保育所は定員5人の小規模ですが、生後4カ月から2歳5カ月までの子どもが在籍しています。西宮市では保育施設は20日から特別保育になり、社会機能を維持するために就業継続が必要な人、ひとり親家庭で仕事を休めないなど事情がある人のみの利用になりました。利用中の人も仕事が休みの日には自宅で過ごしてもらうようお願いしています。乳幼児の保育はスキンシップだらけです。感染予防措置として、おもちゃも含めて施設内は毎日消毒、台所の換気扇を回し続け、窓も1時間ごとに10分開け、職員の検温もしています。でも、この年齢の子どもたちはマスクをつけることができません。大人がつけるしかありませんが、マスクも足りず、洗って消毒して再利用しています。保護者は外で働いて迎えに来ますから、そこから感染しないとも限らない。職員が自分の家から持ってくる可能性もある。常に感染と隣り合わせという思いです。

●復興はこれから ここでは転べない
河津誠さん(57)地獄温泉「青風荘.」代表

 ここで転ぶわけにはいかないです。南阿蘇村は2016年の地震とその後の土砂災害で二重の被害を受けました。うちの施設も甚大な被害を受け、震災復興支援のための補助金7億円と自己負担金合わせて約10億円を使って工事を進めてきました。昨年、日帰り入浴客の受け入れができるようになり、この春には村につながる大動脈の国道57号の復旧、新ルートの工事が済み、施設内レストランのオープンを予定していました。やっと雇用が生み出せる、そう思っていただけに、つらいです。うちは一部施設しかまだ営業していなかったので、そこは不幸中の幸いですが、観光は南阿蘇の基幹産業。地域全体の打撃は大きいです。4月8日から自主的に休業しています。土日のお客さんのほとんどが福岡県や佐賀県からです。福岡で外出自粛要請が出ていてもこちらが営業していればお客さんは来てしまう。断ることもできない。万が一、発生源として名前が出てしまったら復興どころではなくなります。

(構成/編集部・深澤友紀、ライター・宮本さおり)

AERA 2020年5月4日-11日号

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