高橋尚子(たかはし・なおこ)/1972年、岐阜市生まれ。2000年のシドニー五輪女子マラソンで金メダル。現在はスポーツキャスターなどで活躍 (c)朝日新聞社
高橋尚子(たかはし・なおこ)/1972年、岐阜市生まれ。2000年のシドニー五輪女子マラソンで金メダル。現在はスポーツキャスターなどで活躍 (c)朝日新聞社

 東京五輪・パラリンピックの延期を、シドニー五輪金メダリスト・高橋尚子さんはどう感じているのか。AERA 2020年5月4日-11日号で、けがで走ることができなかった経験から得たこと、新型コロナウイルスを乗り越えた先の大会の価値などを語る。

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 外出自粛で運動量が減った方も多いと思いますが、運動をしないと血流が悪くなり、足がむくんだり、疲労回復が遅くなって倦怠感を覚えたりし、重い病気の引き金になる可能性もあります。手先足先を動かす簡単な運動でも体調管理につながるのでぜひ採り入れてほしいです。

 今は多くの方々はスポーツなど二の次三の次で、私たちがやれることは少ないかもしれないですけど、私たちは常に体と向き合ってきました。今まで培ってきたノウハウや家でできる運動を発信して、役に立ててもらうことが、応援してくださった方々への恩返しだと思います。

 私自身はいまだにガラケーを持つアナログ人間で、SNSなどで発信していないのですが、私が大会長を務めるぎふ清流ハーフマラソンのホームページなどで、運動を紹介する動画をアップしようと思っています。

 アスリートのみなさんは来年、本当に五輪ができるのか不安が大きいかもしれません。でも、今は開催を信じてやるべきことを続けてほしい。家を出られないからといって練習を止めてしまうと取り返すのに何倍もの時間が必要になりますから。

 私はシドニー五輪の前年、五輪代表の選考がかかった世界陸上の直前に足をけがしてしまい、3カ月ほどまともに走ることができませんでした。そのとき家の中で補強練習をし、メンタルトレーニングを勉強しました。みんなが1日4~5時間走るなら、私は6時間家の中で何かをしようと。腹筋も朝夕1千回ずつやりました。走れないならその中でやれることをやり、自信にする。そういう時間を積み重ねて、けがが治ってみんなと合流したとき、「あれ、前よりも走れている」と自分の新たな可能性を感じましたし、翌年の金メダルにつながったと思っています。

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