説教の中で、矢部が岡村に人として成長するための手段として「結婚」や「恋愛」を勧めている(ように見える)ことに対して批判の声もあがっているようだが、もちろんそれも一理ある。「自分は結婚(恋愛)がきっかけで変わったから、お前も結婚(恋愛)をするべきだ」というのは、もちろん別の意味で問題のある発言だろう(矢部が直接そう言っているわけではないが)。

 ただ、個人的にはそのことよりも、矢部が岡村のためにこれだけの時間をかけて、言葉を選んで、リスクを負って、あえて公開説教を行ったという事実に心を動かされた。一お笑いファンとして、ナイナイというコンビを長年見続けてきたからこそ、ここで矢部がぶちまけた話の内容の重みがわかる。

 ナイナイにとってこれまで最大の危機は、岡村が心身の疲労により無期限休養に入ってしまったことだった。このとき、矢部は1人でナイナイのレギュラー番組に出続けて、岡村の復帰を待った。その後、岡村は復活して、自分を追い詰めるようなこれまでの生き方を見直すようになった。

 だが、実は矢部はそのときから今まで岡村に対して引き続き不安と不満を抱えていたのだ。矢部によると、岡村はもともと内弁慶なところがあり、身近なスタッフなどには気を使わせるようなタイプの人間だった。復帰後は、スタッフも今まで以上に岡村の精神的な状態に気を配るようになった。さらに、ナイナイも芸歴や年齢を重ねたことで立場が上がり、彼らに物申すことができる人もどんどんいなくなっていった。

 私のようなお笑いファンの目から見ると「事件後に岡村は以前よりも丸くなった」という印象だった。だが、すぐ隣で彼を見てきた矢部によると、本質的には全く変わっていなかったということなのだ。あの休養から復帰までの大騒動のときにすら言えなかったことを、矢部はいま初めて口にしたのである。

 世間から見れば、今回の事件は古い価値観を持つ男性タレントが引き起こした致命的な舌禍騒動ということになる。しかし、岡村を長年見てきた矢部にとっては、これは起こるべくして起こった事件であり、この機会に何十年もため込んでいたものを吐き出すしかなかったのだ。番組の終わりに矢部は、自分がその場に出てきた意図についてこう語っていた。

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自分たちの恥部をさらすことがナイナイらしさ