もちろんテレビや新聞、ラジオの情報は今も力を持っていますが、誰かがツイッター上で発信した情報が拡散されたり、専門家がブログで書くことを信頼している人もいます。個人のブログでYouTubeを引用したり、ツイッターにアップしたり、メディアミックスも進んでいる。現在の情報はビュッフェスタイルですよね。高級料理もB級グルメもあって、自由に選べるという時代です。
多様で便利ではあるんだけど、1人1人がジャーナリストにならなきゃいけないし、プロデューサーにならなきゃいけないのだと思います。さらにコロナによって外出できない状態になって、テクノロジーが力を持つようになっています。これが平成初期以前に起きていたら、そうはならなかったと思いますが、一方で、情報ソースが少なかったら国民ももっとすんなりと政府の指示を聞いたかもしれない。
今は情報が双方向になり、無数の考え方が表に出てきているし、多すぎて追えなくなっていて、声が大きい人に「それでいいや」って乗っかったり、自分が非難されない情報を支持するようになってきていると感じます。
ここ30、40年ぐらいの間、マスメディアはわかりやすく伝える工夫をしてきたと思います。例えばテレビでは、テロップや字幕スーパーを出したり、ワイプを使ったり、図解したり。わかりやすいかたちで情報が出てくるのはものすごく良い文化だと思いますが、与えすぎてきたんじゃないか。個性や判断能力を奪って、結果的に格差を生んでしまったんじゃないかとさえ思ってしまいます。
緊急事態宣言が5月末まで延長されましたが、これから時間が経っても「はい、終わり!」と以前の生活に戻るようなことはないでしょうね。今、企業で行われているZoom会議は今後も続けられそうだし、テレビ番組のリモート出演も定着するかもしれません。まあ、ネットでできることをテレビでやっているだけだという批判もありますが。情報を自分で分析したり、それがズレていたとわかったら方向修正したり、そういう力が必要なんだと思います。匿名のSNSで裏アカを作ったり、ネットニュースのコメント欄で人を叩いたり、炎上に乗っかったりしているのはただのストレス発散ですよ。この状況になって改めて、自分で選択するという力を磨かなきゃいけないなと思っています。