一方、松嶋はどうか。彼女は最近、インタビューで「女優としての未来像」を聞かれ、こんな発言をしている。
「私は自分を俯瞰で見る癖があるんです。人様に見ていただくお仕事をしているので、ときどき自分を俯瞰で見て、公私のバランスを整えながらやってきたのですが、生真面目にバランスにこだわりすぎると疲れてしまうこともあって。なので、少しだけワガママに軽やかに生きていきたいなと思っています」(ハルメクWEB)
その「お手本」として、ジェーン・バーキンを挙げていた。英仏で女優、歌手、モデルとして活躍、ブランド「バーキン」の由来にもなったカリスマだ。私生活では3度の結婚をして、娘のひとり、シャルロット・ゲンズブールも芸能界で活躍している。
そのマルチで奔放な生き方は松嶋とはやや異なるが、彼女にはそういうものへの憧れがあるのだろう。とはいえ、そこに突き進むようなタイプでも立場でもないことから、ふだんは「生真面目にバランスにこだわり」ちょっとだけ我慢しながら生きていると考えられる。そして、この二面性が「家政婦のミタ」(日本テレビ系)や「なつぞら」(NHK)といった対照的な役柄にもそれぞれにハマれる秘訣なのだ。
つまり、反町が結婚によってやんちゃからいいひとへとキャラ変して、持ち前の「合わせる」力をより発揮するようになったように、松嶋も自分を俯瞰しつつ、家庭人としての安定した日常を逸脱しないようバランスをとっているということだろう。
これをシンプルに表現するなら、ふたりとも調和を重んじるタイプということだ。この協力関係は、ドーベルマン騒動を乗り越えるうえでも有効だったに違いない。こうしたことが夫婦円満につながるし、仕事にも集中できるゆえんである。
非婚率や離婚率が上がって、少子化が進む今の日本で、子宝にも恵まれ、夫婦そろって公私ともに充実ぶりを示し続けるふたり。しかも、それを派手にアピールすることもない。高い好感度は当然のことかもしれない。
●宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など