北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表
北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表
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「愛の不時着」の舞台となった開城(撮影・北原みのり)
「愛の不時着」の舞台となった開城(撮影・北原みのり)

 作家・北原みのり氏の連載「おんなの話はありがたい」。第一回は、話題の韓流ドラマ「愛の不時着」について。北原氏は「フェミドラマでもあるのだ」といいます。

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 韓国の財閥女性がパラグライダーで竜巻に巻き込まれ北朝鮮に不時着してしまう。

 そんな設定の韓流ドラマ「愛の不時着」熱が止まらない。Netflixで2月から配信されたが、連続トップ10入りをしている。これまで韓流に関心を見せなかった著名人がドラマ評論をし、韓流としばらく距離を置いていた人が、生まれた川に戻る鮭のように大量に帰還している。

 それにしても一体なぜ、2020年コロナ禍の日本社会を生きる私たちが、韓国女性と北朝鮮男性の恋愛に、これほどまでにはまるのだろう。38度線の厚い壁に、号泣してしまうのはなぜだろう。

 もちろんヒョンビン演じる北朝鮮のエリート男性リ・ジョンヒョクの崇高な愛の力は、このドラマの肝である。コロナ禍で日本の「オッサン政治」に深い絶望を味わったと嘆く女友だちは、「政府関係者一式とヒョンビン一人交換できないか」とラインしてきたが、ヒョンビンレベルを知ってしまった私たちに、今の安倍政権はあまりにも無能で無力で愛がなさすぎるのだ(「愛する人を守るために」という安倍さんのセリフの嘘くささに、気分が悪くなった人は少なくないはずだ)。

 また南北の女性たちのシスターフッドも、フェミ的にはたまらない。女性と女性が信じ合い、助け合う。暴力で闘うのではなく、知恵で愛する人を守るのが、女性の力なのだと信じさせてもらえるフェミドラマでもあるのだ。

 ところで、2カ月ほど前になる3月4日、北朝鮮の対外宣伝メディア「わが民族同士」はドラマ名こそ伏せてはいたけれど「愛の不時着」だと誰もが分かる内容で、「絶対に許せない極悪非道な挑発行為」と強い抗議をした。北朝鮮政治の腐敗を描いたことへの抗議もあるだろうが、多分、北朝鮮を貧しく描きすぎている点を「侮辱」と捉えたのではないかと想像する。

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北原みのり

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北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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実は昨年、1週間北朝鮮を旅した