
新型コロナウイルスは感染者数だけを見れば、やや落ち着いてきたように見えるが、これをどう捉えるべきなのか。AERA 2020年5月18日号では徳田安春・群星沖縄臨床研修センター長にインタビュー。日本が取り組むべきこととは?
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現在、日本政府が発表している国内感染者数はおよそ1万5千人。これは「PCR検査で陽性だった人」の数ですが、私の推計では、実際は少なくともその12倍となる18万人に上るだろうとみています。日本におけるPCR検査は事実上、重症者と濃厚接触者のみに制限されてきたため、数字に表れない感染が拡大していると考える必要があるからです。
日本がいま第一にやるべきは、感染状況の実態把握、つまりPCR検査を可能なかぎり増やすことです。そして、症状にかかわらず感染者をきちんと診断し保護・隔離をすること。新型コロナの封じ込めに成功している台湾や韓国は、当初からすべての感染者の保護・隔離を徹底してきました。中国も早めに台湾・韓国方式に切り替えたことで、現在は社会経済活動を9割程度行えるまでに至っています。
外出自粛や休業要請などの“出口”を探る手がかりになるとされている抗体検査ですが、現在の測定方法には問題が二つあります。一つは、新型ではない従来のコロナウイルスに対しても陽性判定が出てしまうケースがあること。もう一つは感度の問題、要するに精度が低いのです。また、抗体を保有している(陽性)としても、それが免疫になるかどうかは定かではありません。さらに言えば、免疫がどれくらいの期間持続されるのかもわかっておらず、一度感染した人でも数カ月後には再感染する可能性があると言われています。現時点でのサイエンスでは、「検査が陽性だったので、この人は完全に自由です」というパスポートにはならないのです。
抗体検査は“参考資料”にはなりますが、結局のところ既往感染(過去の感染)をつかまえることしかできません。現在の国内感染者数が仮に18万人だとしても、まだ人口の0.14%。残りの99.8%はこれから感染する可能性があります。感染者をリアルタイムで見つける方法はいまのところPCR検査しかないので、一刻も早いPCR検査の拡充に国をあげて取り組むべきだと私は思います。
(構成/編集部・藤井直樹)
※AERA 2020年5月18日号