僕は仕事が趣味みたいなところがあるから、休むことの意味があまりわからなかったんですね。旅先でもパソコンがないと落ち着かない。たぶん一生それは変わらないと思うんです。だけど休むことは、一つの投資みたいなもので。例えば「自分なりにこの地域を育てたい」でもいい。年に1回どこかに行って、漁港で取れたサバ煮定食を食べるのもその地方を育てることになります。休むことが怖く、不慣れな人は、ある地域を育てるために休暇を取ったらいいんじゃないかと思うんです。

 留年もしないで卒業して就職もして、客観的に見たらすごく立派な人です。

 かに座は兵隊になってしまう危険性が高い。一度ミッションを定めると、自分の好き嫌いよりも「やり遂げる」ことを優先しがちです。このままでいいのかなという思いの裏には、もしかしたら「自分の安全と安定のためだけに生きてきた」という罪悪感があるのかもしれません。でもそこには努力が伴っているわけだし、素晴らしいことだと僕は思います。自分のために生きるって大変なことです。

 そして、他人のために身を粉にしてきた人も同じようにどこかで立ち止まります。私の幸せって何だろう、他人のためにやり過ぎてきたんじゃないか、って。そういうときは、やってこなかったほうをやるタイミングがきた、と思ってください。脇道にそれるときがきたんだな、って。

AERA 2020年5月18日号

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