当時は、吉原を訪れる中国人は富裕層が中心だったという。ところが2,3年前から「普通の金銭感覚」を持った中流階級の中国人が急増したという。
「ツアー客が昼間に来るケースが多くなりました。家族で来て、奥さんが浅草や上野、銀座で買い物している隙に、男性だけ抜け出してタクシーで吉原に向かうパターンが多い。ツアーには、正規のガイドとは別に吉原のような風俗街をアテンドする人がいるようです」(同前)
一方、店側は外国人の利用を嫌がる店が多かったようだ。酒井さんによると、「日本語をしゃべれないとダメ」「日本人と一緒じゃないとダメ」という理由で、当初はほとんどの店が制限をかけていたという。だが、店側もだんだんと慣れてきて規制は緩和される傾向に。「外国人はプラス1万円」というルールを設ける店も多かったが、3万円未満の格安店を中心に、外国人でも同じ値段で入れる店が増えてきたという。
「店の意識も変わりましたね。英語表記や中国語表記のメニューを用意する店も増えています。あるソープ店の系列では、外国人専門のデリヘルを営んでいます。店のホームページも英語表記なので、明らかに外国人をメインターゲットに据えています」(同前)
こうしたインバウンド需要が一瞬にして消滅してしまった吉原。酒井さんは、長年取材をしてきたこの街の未来をこう心配する。
「街からは外国人どころか、日本人も消えました。こんな状況は見たことがありません。このまま閉じる店もあるはずです。月末にならないとわかりませんが、5月末までに少なくとも20軒くらいは倒産するのではないでしょうか」
風俗店からの「悲鳴」は新聞やテレビではあまり取り上げられない。だが、そこにも確かに人の営みがあり、困窮している現状があることは忘れてはならない。(AERAdot.編集部・飯塚大和)