東京電力の人材流出が止まらない。2011年度の依願退職者が、例年の3倍を超える約460人に上ることが明らかになった。20代~30代の大卒社員が中心で、会社の将来を悲観して転職したとみられている。
しかし、東電を襲う人材流出は若手だけにとどまらない。
複数の原発で勤務経験があり、将来を嘱望されている原発技術者の男性Aさんは、1月末、東京・赤坂にある高級日本料理店に、原発に関連する韓国の大手企業から呼び出しを受けたという。行ってみると、明らかに自分より年長の男性2人が下座で待ち構えており、こう切り出した。
「Aさん、うちに来てください。必ずやいいことがある。日本の原発の技術やノウハウは、韓国の何倍、何十倍も優秀です。お金の心配はしないで、飛び込んできてください」
そう言いながら、ぶ厚い白い封筒をいきなり差し出してきたというのだから驚きだ。Aさんは封筒には手をつけず、
「いま、そんな考えはありませんから」
と返答したという。
2人は、どちらも日本語が堪能で、そう簡単にはあきらめてくれない。今度は、「年俸5千万円」「月に2回の帰国と、往復航空券はビジネスクラス」「韓国の住まいは高級マンションで、運転手付きの車を用意」など次々に新たな条件を出してきたという。
2次会を断って帰ろうとしたAさんには、手土産が用意された。帰宅後、家族に内緒でこっそり中を見ると、菓子折りの中には現金が入っていたという。
※週刊朝日 2012年4月27日号