林:ほかに定期的につついてみたいのって、だれですか?
ナンシー:ちょっと別の意味だけど、市原悦子とか。コワいですよね。コワいって、田んぼの田の字を書いて棒を引っ張る……。
林:畏敬の「畏」ですね。加藤治子さんも、コワくないですか。
ナンシー:コワい。女優さんでコワいのは、あと小川真由美。
林:ああいう人たちに比べると、最近の若い女優ってみんな小粒でしょ?
ナンシー:若い女の子は、あんまり興味ないんですよ。「だれの似顔を彫りたいですか?」ってしょっちゅう聞かれるんですけど、若いコはすごい描きにくい。特にきれいなコは。
林:ナンシーさんがだれかのことを書くときは、まだ愛情があるわけでしょ?
ナンシー:あんまり好きとか嫌いとか関係ないんですよ。テレビ見てて、気持ち悪いなって思って、それをうまく理屈をこねられて、いいところに着地できるなという感じになったら原稿にするみたいな。でも嫌いなほうが理由がつけやすいから、ほめる原稿はあんまりなくなっちゃうんです。
林:「なんかあの人嫌いだと思ってたんだけど、ナンシーさんのを読んでその理由がはっきりした」とかいう会話が私たちは多いんですよ。私、郷ひろみがなんか最近変わってきてるなという思いが漠然とあったんですけど、ナンシーさんが「郷ひろみはびっくりするぐらい持ち直してきた」ってお書きになって、そうか、と思って。
ナンシー:普通は持ち直せないんですけど。不思議なんです。
*
林:そもそも、なんで「ナンシー」ってしたの?
ナンシー:十一年前に仕事を始めるときに、消しゴム彫って生活ができるなんてだれも思ってなくて、ふざけてたんです。ビジュアル関係はスージー甘金とかペーター佐藤とか、ああいうのがいいんじゃない? って。私、本名は「直美」っていうんで、じゃ「ナンシー」だって。でも、二年ぐらいたってすごい後悔した(笑)。
※週刊朝日 2020年6月5日号