話の流れから、ネット右翼の話に。「反日」のレッテル貼りの危うさを批判した。「『憲法改正』とか『反日』とか、彼らがデモで掲げる内容は、みんな赤報隊が言ってたこと。ろくでもない。『赤報隊化する日本』だなぁ」。自著タイトルになぞらえて笑った。なお、赤報隊事件での警察のリストには、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の信者二十数人も入っていた。昨夏の安倍晋三元首相銃撃事件では、宗教2世の男が殺人容疑で逮捕された。ここ数年、体調を崩して言論活動から遠ざかっていた鈴木さんだが、もしお元気だったら、さぞ深い論考を残しただろう。残念でならない。

 鈴木さんは柔軟なのに、芯が通っていた。購読紙はずっと産経だけだったが、「情報によって人間が変わるなんてあまりない。だから産経を読んでいても、私のようにリベラルになるんです」。

 憲法に対する考えも明確だった。産経新聞が創刊80周年にあわせて提言した「新憲法」の前文で、国家の目標を「独立自存の道義国家」と書いたことに、「国家がそんなことを決めるんだったら、共産主義や社会主義を批判できない」と指摘していた。

 安倍元首相の改憲論にも、9条改正にも反対だった。「改正論議で、人権問題を強調しようという人が誰もいない。国家の力を強くしろ、北朝鮮を許すな、核武装しろ、徴兵しろ、みたいな方向ばかり。人間そのものの自由や平等をないがしろにしては危ない」という理由からだ。

 排外的で自慰的な「愛国」こそ、日本の良さを失わせる。時代が極端な方向に流れるいまこそ、愛国の本質が問われる。(望月衣塑子

週刊朝日  2023年2月17日号

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