2017年に改正が行われるも未だ課題が残る、日本の性犯罪を巡る刑法。今年はその見直しをする年に当たる。現行刑法では、意に反する、もしくは同意のない性行為だけでは罰せられず、「暴行・脅迫」を用いた場合か、「抗拒不能」の状態であった場合に罪が成立する。AERA 2020年6月1日号では、海外の例を取り上げつつ、日本の刑法について考えた。
* * *
海外ではどうか。人権団体「ヒューマンライツ・ナウ」が18年に発表した「性犯罪に関する各国法制度調査報告書」によれば、ここ20年近くでイギリス、ドイツ、米国・ニューヨーク州、スウェーデンなど多くの国や地域で、同意のない性行為を「不同意性交」として、犯罪とする動きが増えている。
中でもスウェーデンは18年の刑法改正で、「自発的に参加していない者と性交した者はレイプ罪」とした。ドイツなどは「ノー」を示せばレイプとなるが、スウェーデンは「イエス」という自主性を確認できなければレイプとし、最も被害者寄りの制度とされる。
報告書の作成に携わったヒューマンライツ・ナウ事務局長の伊藤和子弁護士は、背景には国連が性犯罪規定の法の見直しなどを提案しているのに加え、「#MeToo運動」による女性や性暴力被害者の声の高まりがあったと話す。
「スウェーデンでは長い時間をかけ超党派で議論がなされてきた結果ですが、それを後押ししたのが特に女性たちの声でした。性被害者が泣き寝入りするようなことがあってはいけません。日本も、被害者視点に立って刑法を改正する必要があります」(伊藤弁護士)
日本で刑法の見直しの年となる今年、法務省は3月31日に、性犯罪をめぐる刑法の見直しについて議論する「性犯罪に関する刑事法検討会」を設置した。メンバーは17人。精神科医や刑事法の研究者、そして初めて、性被害当事者も委員に選ばれた。
性被害当事者としてメンバー入りした、性暴力被害者らでつくる「Spring」代表理事の山本潤さんは言う。