AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。
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“ホイッスルブロワー”(内部告発者)と聞いて多くの人が連想するのは、おそらくこの言葉が広く知られるきっかけとなった「スノーデン事件」だろう。2013年、米国家安全保障局(NSA)の元職員エドワード・スノーデンが、米国政府による個人情報監視プログラムの存在を暴露したこの事件は、米国のみならず世界中に強烈なインパクトを与えた。
一方、スノーデン事件の10年前に、英国の極秘機密を暴露した女性がいたことはあまり知られていない。最新作「オフィシャル・シークレット」で件のホイッスルブロワーであるキャサリン・ガンを演じたキーラ・ナイトレイは語る。
「この役を引き受けた最大の理由は、強い興味が湧いたから。同時に、この話を知らなかったことに対する驚きもあった。イラク戦争が起こったとき私は18歳で、政治に強い関心があったし、イラク戦争のニュースも追っていた。にもかかわらず、この話もキャサリン・ガンという人物についても一切知らなかった。だからいまこの話に光を当てたいと感じたの」
03年、英国の諜報(ちょうほう)機関政府通信本部(GCHQ)で翻訳の仕事をしていたキャサリンは、英米がイラクへの侵攻を強行するために裏工作を企てていることを知る。強い憤りを覚えたキャサリンは、イラク戦争を阻止するために機密情報をマスコミにリーク。しかし告発も虚しく侵攻は開始され、キャサリンは公務秘密法(オフィシャル・シークレット・アクト)違反で起訴されてしまう。
「ここには内部告発者という存在の二面性が見える。真実を伝える者、そして法を犯す者。本当に興味の尽きないテーマ。法を守ることは民主主義の基本だし、法を犯せば罰せられるというのも当然のこと。それでも国民を守るために真実を知らせるべきなのか。この映画は興味深い点に触れるの」
ナイトレイはキャサリン本人と実際に会ったときの印象をこう語る。