「評判が良かった放送を切り出したり、未公開映像を出したりするのはよくあることです。ただ、今回に関しては、本編で炎上があったにもかかわらず、ショッキングな部分を選んだと感じます。制作陣があの炎上を盛り上がりと感じ、動画を出せばおいしいと思ったのでしょう」
木村さんが誹謗中傷に悩むなか、出演者の精神的ケアは行っていたか、なぜ追加動画をアップしたのか。フジテレビに質問状を送ったところ、企業広報室から返答があった。コロナ禍で撮影を停止した後も、「木村花さんをはじめ番組に出演いただく方々とスタッフの間では近況を共有するようにしておりました」「動画の回数は素材の分量や編集の都合によります」(抜粋)
番組制作側が炎上を盛り上がりと捉えてしまう背景には、リアリティー番組に対する視聴者の欲望もある。アメリカでは、リアリティー番組の見方を「ヘイトウォッチング」と呼び、文句や不快感をぶつけながら視聴することが一種の娯楽になっている。この感覚は国境を超え、イギリスでは視聴者が嫌いな出演者をクビにできるシステムを取り入れた番組もあるという。
テラハの場合はどうか。木村さんと同時期にテラハに入居していた“社長”こと新野俊幸さんは、こうツイートした。
<演者の言動を陰湿に批判することがテラスハウスの面白さのひとつであったという事は否めない>
スタジオ出演者の一人、アジアンの馬場園梓さん(39)はこうコメントした。
<仕事としてコメントの依頼を受け、責任を持って、厚かましながらいろんな方の『行動』について意見をさせていただいてきました>
つまり、出演メンバーもスタジオタレントたちも、“ヘイトありき”で番組が成り立っていることに以前から気付いていた。だとすれば、制作側はなおさら演出に気をつかわなければいけなかったはずだ。
恋愛観察バラエティー「あいのり」に出演したプロレスラーの崔領二(さい・りょうじ)さん(39)はリアリティー番組の危うさを指摘する。
「20代のフツウの男女がいきなり脚光を浴びるため、出演前の自分とのギャップが大きくなる。プライベートを切り売りするので、丁寧にケアしないと傷つく人も出てきます」
(編集部・福井しほ)
※AERA 2020年6月8日号より抜粋