ニュースキャスターの辛坊治郎氏は、かつてバックパッカーで世界のあちこちを旅した。格安航空券を買うという行為につきまとう「違法行為」の匂いを払しょくしたのが、現在のH.I.S.。1980年当時、辛坊氏にチケットを手売りしてくれたのが現在のH.I.S.の会長にして、スカイマークエアラインズ創業者、ハウステンボス社長の澤田秀雄氏だそうだ。澤田氏の手腕について、辛坊氏はこう言う。

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 ハウステンボスが東京ディズニーランド以上の投資を得て長崎・佐世保に姿を現したのが今からちょうど20年前。しかし東の雄ディズニーランドと違って、この西の雄は18年連続の赤字決算と倒産に見舞われる。澤田氏が社長に就任して1年半、決算は実にあっけなく黒字となった。

 手法はシンプルかつ大胆だ。徹底的に「入るを増やして、出るを抑える」を実践したのだ。澤田氏はハウステンボスの経営を引き受けるに際して、出資者に8割の債権放棄を求め、残る2割の借金を手持ち資金と地元財界などの支援で埋め、借金ゼロの体制を作った。スタートで借金がなければ、金利が上がっても返済に苦しむことはない。毎年の営業利益は、そのまま会社の利益になるのだから、従業員の士気も上がる。

 スタートラインをきれいにし、矢継ぎ早に集客力アップに乗り出した。テーマパークの主役は子供たちだ。それまでハウステンボスはどちらかといえば落ち着いた雰囲気を楽しみたい大人がメーンターゲットだったが、テレビ局とコラボを実現させて人気のアニメを前面に押し出したアトラクションを作り、集客力のあるAKB48のコンサートを実施、さらにいつ行っても閑散としていた美術館を「お化け屋敷」に改装してしまった。これで夏休み時期の集客力が一気に上がった。

 その結果、2011年9月期決算を、東日本大震災で従来の頼みの綱であった外国人観光客激減となったにもかかわらず、前年度の約11億円の赤字から、約10億円の黒字決算で迎えることができたのだ。

※週刊朝日 2012年4月13日号