そんな時、被害者が使える手段が「発信者情報開示請求」だ。これは、プロバイダ責任制限法で規定されている方法で、ネット上での誹謗中傷による名誉毀損やプライバシーの侵害、岩崎さんのような著作権侵害など発生した場合、プロバイダに対して投稿者の情報(氏名、住所、メールアドレスなど)の開示を請求できる権利だ。
岩崎さんの場合、キュレーションサイトなどで無断使用されることが多かったため、そのサイトを運営するコンテンツプロバイダに、匿名者の情報の開示を求めた。氏名やメールアドレスを知ることができれば、次は本人に連絡を取り、削除要請や使用料の請求などを求めることになる。直接交渉で相手が応じない場合は、裁判手続きも検討する。岩崎さんはこれまでプロバイダに対して約350件の開示請求を行い、7割以上の開示に成功した。
「多少のITスキル、法律知識、写真コンテンツの知識がないと難しいかもしれませんが、結局のところは慣れです。慣れれば、発信者情報開示請求書は5分で作れます」(岩崎さん)
発信者情報開示請求に必要な書類は3種類。
(1)発信者情報開示請求書(「プロバイダ責任制限法 関連情報Webサイト」から無料でダウンロードできる)
(2)請求者の身分証のコピー
(3)権利者側(被害者)と発信者側(無断使用者)の証拠(当該サイトをプリントしたもの)
無断使用を見つけた場合、証拠としてスクリーンショットを取ったり、プリントしておいたりする必要がある。また、自分が著作権者であることを証明できる資料も用意しておく。これは自分のサイトや投稿、画像データなどが挙げられる。誹謗中傷や名誉毀損の場合も同様で、自分が誹謗中傷されている書き込みの証拠を集めておこう。
「最近は、ちゃんと書類をそろえても、プロバイダが開示請求の手続自体を無視、拒否されることもあります。こうなると裁判手続きで開示させるしか方法はありません。あと、自分が著作権者である証明となるものをあれこれ要求されたり、印鑑証明書を求められたりすることあります。私の実感では、以前に比べて、プロバイダが手続きに対して慎重になっているように思います」(岩崎さん)