このように、取材をしていてリモート推奨派の意見が多数を占めていると感じます。なかにはフルリモートのままで仕事を続けたいと断言する人もいました。その理由は、時間を有意義に使えるといったこと以外にも、「同僚と関わるストレスから解放されたと実感したから」、といった人も多いようです。

 6月になり職場の同僚と接する機会も増えていきます。「早く仲間と会いたい」という前向きな人もいるとは思いますが、一方で「会いたくない」「面倒くさい」とブルーになっている人も相当にいるようです。

 電気メーカーで販売支援部門に勤務しているCさんは、「出社して同僚に会うとストレスを感じて仕事のモチベーションが下がる。だからフルリモートがいい」と話しました。その代表的なストレスが、同僚の悪口を聞くこと。同僚から誰かの悪口を聞くと、「自分を同じように悪口を言われているに違いない……」と多くの人がうんざりしてしまうものです。

 Cさん自身も、コロナ禍以前から職場で頻繁に悪口を聞いていました。同僚は、上司の役員に対するおべっかに呆れたり、若手社員の常識外れの行動を批判したり、同期社員の不正ギリギリの経費申請に嫌みを言ったりしていました。それを聞いていて「そんなことを言うんだったら、指摘して、改めてもらうようにすればいいのに」と感じるのですが、最後は「困ったものだよね」で終わってしまいます。

 悪口を話した人はスッキリするかもしれませんが、聞いた人はモヤモヤしてストレスがたまるだけ。なので、今度は悪口を聞かされた人が誰かに悪口を言いたくなったりします。すると、職場は悪口が蔓延した状態になります。表面的には笑顔で仲良く仕事をしているようで裏では悪口が飛び交う職場が醸成されていくことになります。

 そんな職場でモチベーションがあがるわけがありません。だからCさんは、「人に会いたくない・関わりたくないからフルリモート賛成派」と発言したのです。

 しかし、お互いが信頼して助け合う職場になるのであれば、状況は変わるはずです。Cさんは、「悪口がない職場なら出勤して勤務したい」と明かしました。

 最近は、「エンゲージメント」という人との接触機会の増加がモチベーションアップにつながるといわれていますが、どのようにエンゲージメントするかによって変わってくるのです。
もし、自分の職場が悪口にあふれているのであれば、この機会に一掃させる取り組みを行いたいものです。

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西野一輝

西野一輝

西野一輝(にしの・かずき)/経営・組織戦略コンサルタント。大学卒業後、大手出版社に入社。ビジネス関連の編集・企画に関わる。現在は独立して事務所を設立。経営者、専門家など2000名以上に取材を行ってきた経験を生かして、人材育成や組織開発の支援を行っている。

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