AERA 2020年6月15日号より
AERA 2020年6月15日号より
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 SNSでの誹謗中傷を法で規制する動きが顕著になり、発信者の特定を容易にするための制度改正が議論されている。だが、検閲化する恐れもある。表現の自由は担保できるのか。AERA 2020年6月15日号から。

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 サービスを提供する事業者側の対応も問われている。

 今年4月、LINEやツイッター、フェイスブックなどが名を連ねる一般社団法人ソーシャルメディア利用環境整備機構(SMAJ)が発足。人気リアリティー番組「テラスハウス」に出演していたプロレスラーの木村花さん(享年22)の死を受けて、SNS上の名誉毀損や侮辱などを意図したコンテンツ投稿に対して取り組みを行うと緊急声明を発表した。声明では、「実効性ある取組を行わなければならない」として、禁止事項の明示と措置の徹底など六つの項目が挙げられた。同法人代表理事の曽我部真裕さんは言う。

「名誉毀損や侮辱に対応することは当然ですが、不快な表現をどこまで禁止事項とするかは事業者側が決めていいことだと思います」

 これまでも事業者はさまざまな取り組みを行ってきた。たとえば、ツイッターは会話の健全性を維持するため、リプライに制限をつける機能をテスト導入した。フェイスブックではコンテンツを監視する担当者を設け、全世界約3万5千人体制で24時間チェックする。LINEでも監視システムと目視の二つを使って不適切な投稿がないかを確認、非表示にした投稿は半年間で約2千万件にのぼったという。

 だが、SNS上でのコミュニケーションにも「文脈」がある。前後のやり取りや相手との関係性によっても、言葉の捉え方は変化する。

「アメリカでも大統領に対して一般市民が直接いろいろなことを言える。そういった環境は残さないといけないと思います。誹謗中傷にあたるかどうか、ギリギリの線引きを僕たちがつけていいのかは、正直悩ましい」

 そう吐露するのは、SMAJ専務理事でLINE執行役員の江口清貴さんだ。SMAJの中でも意見は割れており、明快な答えはまだ出せないでいるという。

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